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□トリックスター
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我が名はブラックマジシャン。
マスターの最も近くでお仕えするという身に余る特権を得た唯一のしもべが、この私だ。
人間ではマスターとのみ言葉を交わすことができる、というのも特殊なことなのだが、果たしてそれが本当に私だけであるのかは分からない。
願わくば、私だけであれば良いと──
そんな思い上がった考えが、災いしたのかもしれない。
「そういえば、デュエル以外で召喚したことがあるのって、ブラックマジシャンだけなんだよね」
「そうでしたか」
「もしかして、自分のカードならブラックマジシャンの他にもお話しできるのかな?」
「は、はあ…」
部屋でデッキ調整に励んでいらしたマスターが、何気なく私に問い掛けた。
あまり考えたくはなかったことだ。
「可能性は…無いとは言えません」
「そっか、そうだよね。やってみなくちゃ分からないね!」
マスターはデッキの中から適当にカードを抜き出し、期待を込めるように額の前に掲げる。
──何故だろうか、胸が苦しい。
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