お題NARUTO
□●大好きな君のもとへ
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4、手と手が触れあってKside
転校してきて1週間が経ったときに、たまたま声をかけてきた波風ミナトとはアカデミーでも話をするようになり、仲良くなった。
彼はとても優しい男の子だということは関わる中で感じられる。
そして最近は、ミナトと一緒に修行するようになっていた。
と言っても、彼は元々出来が良すぎるため一緒にやるより一人の方が良いような気もするのだが…
私は忍術に関しては、苦手なものばかりで人一倍修行しないと身につかなかった。だからこそ、優しいミナトが一緒に修行してくれたのかもしれない。
「クシナー。」
「ミナト。どうしたの?」
「今日も修行するでしょ?」
「うん。」
「んじゃ、いつものところでいいよね。」
そうミナトはニコニコしながら言うと、どこかへ行ってしまった。
私はそんなミナトの背中を見つめた。
いつしか彼のことが頭から離れなくなっていた。
最初は何とも思わなかった彼の笑顔もいつしか鼓動が速くなる誘因になっていた。
なんだこれ?
・・・・・・・・・・・・・・
私は約束通り、里の中心から離れた人通りのない並木道にいた。
まだ、ミナトは来ていないようだ。
待っている間、私は空を見上げていた。
「あ、ハバネロだ。」
『赤い血潮のハバネロ』。それが私につけられた通り名であった。
私ははっとして、声の主を見た。
そこには3人ほどの少年がいた。
中には少し年上もいて、見たことがない顔であった。
「兄ちゃん。こいつだよ。赤い血潮のハバネロ。」
「へぇ〜。こいつか。」
「な、なんだってばね!」
「気の強いやつだな。」
その年上は鼻で笑ってそう言った。
馬鹿にされたようだが、手に力を入れて我慢する。いくら自分が喧嘩っ早いとはいえ、自分から手を出したりはしない。いつもの喧嘩も相手からふっかけられるのだ。
「本当に赤い髪だな。」
そう言って、男の子達がこちらに近づいて来て、手を伸ばしてきた。
私は咄嗟に構えて、その手をはたき落した。
「いてっ。」
「お前何すんだよ。」
「そっちが、いきなり手を伸ばしてくるからだってばね!」
彼らの目つきが厳しくなったのを見て、私が強気で返した。実際、恐いとかは思わなかった。
「生意気なやつだな!」
一人の少年が拳を振りかざしてきた。
私は殴られると思い、瞬時に構える。
アカデミーに転校してきて1年も経っていないが、体術ならそれなりに自信がある。
振り下ろされた拳を受け流し、瞬時に腹に蹴りを入れてやった。
その一人の少年は「うっ。」と言いながら蹴り飛ばされる。
しかし、まだまだ未熟なものでダメージはそう与えることができなかったようだ。
「痛ぁ…」
少年は腹をさすりながら立ち上がる。
「お前!」
「そっちが先に手をだしてきたんだってばね!」
私は何も悪くない!
私は少年達と言い合いを繰り広げる。
周りには私達以外、誰もいなくて。止める人は誰もいなかった。
「余所者め!!!」
少年が発したこの言葉に私は動かしていた口を止めた。
最近はあまり聞いてなかった単語だ。転校してきたばかりの時は、よく投げつけるように言われていた。
久しぶりに投げつけられた言葉は思った以上に私の心を抉っていた。
何も言わなくなった私を少年達は不思議そうに見ていた。
「どうしたんだ?」
「…さい。」
「は?」
「うるさいってばね!」
私はそう叫ぶと思わずその場から駈け出した。
逃げる気なんてさらさらなかったのに…
悔しいのに…
でも、否定することもできなかった。
だって、私は木の葉の里の人間ではないから。
いや。正しくは、木の葉の里の人間なのだが、里の人間から認められていないのだ。
今さらながらそれに気付かされた。
そしたら急に寂しさが込み上げてきた。
自分は結局一人なのだと気付かされた。
元々この里にも自分の意思できたわけではない。
連れてこられた…
私は何でここにいるの?
動かしていた足を止めて、近くの木にもたれかかる。
息は上がっていて、汗もかいていた。
じっと地面を見つめる。先ほどの少年の言葉が頭の中に響く。
よ そ も の
今まで必死に耐えてきた。自分は強いと言い聞かせて。
たった一言言われただけだった。しかし、それは私の耐えていたものを崩壊させた。
つーっと頬に涙が伝ったのを感じた。
「うぅ〜…」
拭っても拭っても涙はあふれてくる。
本当に何してんだろ。
カサッ
下を向いて、涙を拭っていると近くで足音がした。
そちらに顔を向けるとそこにはミナトが立っていた。
彼は走ってきたらしく、息を切らしている。
「クシナ?」
彼は泣いている私を目を丸めて見ている。
それもそうだ。いつもは強気な私だから、人前で涙なんて見せたことがなかった。
なんだか情けなくて私は再び下を向いた。
「どうしたの?いつもの場所に誰かいたけど、何かされたの?」
彼は優しい声色で私に問いかける。私は黙って、顔を横に振る。
ミナトは「ん〜。」と言ったあと、私に歩み寄ってきた。
私は下に向けていた顔を上げミナトを見つめた。ミナトはしゃがんで私と目線を合わせる。
「え…」
私の両手を優しく握った。
「何があったかは知らないけど、俺はクシナのそばにいるよ。」
それはとても優しい笑顔だった。
その笑顔が私の心に沁みわたる。
「ミナト…」
「大丈夫。」
涙が頬を伝う。
「うん。」
ミナトはそっと抱きしめてくれた。
温かくて、落ち着く。
「ありがとう。」
4、手と手が触れあって
(彼の手はとても温かい)
終わり
2012/5/2
予想外にシリアス風味。クシナちゃんはそんな弱い女じゃないよね。