ここフランスは生まれ故郷であり、俺の帰る場所でもある。例えどんなに嫌なことがあったって必ず帰ってしまう故郷……
おっと、紹介が遅れたな。
俺の名前はJ・P・ポルナレフ。明るく陽気なムードメーカー。みんな俺のことを「ハンサム」「男前」と呼ぶんだぜ!
現在地、空港。
今日、空港に来ているのには理由がある。仲間である「空条承太郎」に頼まれ事をされたのだ。その内容は、承太郎の親友が一週間ほどフランス旅行に来るから、その面倒を見てくれ…ってシンプルなもの。旅行先にフランスを選んでくれたのもそうだが、あの承太郎の「親友」ってのも気になって、俺はすぐにOKと答えていた。
先に教えられた情報は「承太郎の親友」「一週間滞在」「性別は女」くらいだった。特に写真も送られてこず、何かの重要任務かよ!と印象づけられたのを思い出して、ついひとりで笑ってしまった。
…しかし、それが逆に俺を焚き付けたのだ…
「承太郎の親友ってくらいなんだから、とびっきりの美人でカモクでオシトヤカなんだろうなーッ!!」
飛行機から降りてくるであろう承太郎の親友を想像しては、期待が高まるばかりである。
日本からの飛行機が到着したアナウンスが聞こえてから数分。俺は何度もガラスの反射を利用して、自慢の髪型をセッティングする。第一印象というのはとても重要。承太郎の親友に「まあ!ポルナレフさん、素敵な髪型ね!」な〜んて思わせたいなんて、これっぽっちも考えてないぜ?
「あの〜……」
るんるん気分でガラスを見ていると、後ろから遠慮がちに声をかけられた。振り向いた先に人はいない……のではなく、あまりにも小さいから俺の視界に入ってこなかった。
首を下げると…ショートカットの真っ黒な髪に、真っ黒な瞳。ひとまわりふたまわり、いや、それ以上に俺よりも小さい体。
俺は直感した。
この子が承太郎の親友だ!
「きみが承太郎のオトモダチでいいのかい?」
親切に、やさし〜く。
少し腰を屈めて視線を合わせてハンサムスマイルを向けると、「正解」の意味をこめてか、目の前の女の子はニッコリ…それはそれは嬉しそうに、ニッッッコリと笑った。
「ポルナレフ!」
そして、なぜか俺の名を呼んだ。というか叫んだ。空港に響き渡るほどのでかい声で叫びやがった。
「ポルナレフ!会いたかったんだよ、ポルナレフ!承太郎が旅行から帰ってきて土産話を聞いてたんだけど、ずーっとポルナレフの話ばっかり!無口な承太郎が楽しそうに話すんだからどんな人か気になっちゃって、それで」
…俺の中には「日本の女性像」というものが存在している。それはまさしく先ほども言っていた「カモク」「オシトヤカ」が揃っている「美人」だ。
…目の前の女の子を観察してみる。俺が話に集中していないのにもお構いなしで、目を輝かせながら喋りまくっている。この子は……そう、まるで、かつての旅の途中で遭遇した「家出中のガキ」そのもの…
「写真で見たときにかっこいいって思ったけど、やっぱり本物の方が抜群にかっこいいね!」
「……ガキに言われても嬉しくないんだぜ…」
「なっ…?!が、ガキって言うな!これでも承太郎と同い年なんだからね!」
この子に対しての第一印象…はっきり言ってしまえばガッカリ。
これからの滞在期間、俺はどっと疲れることになりそうだ。