Gift

□リアル桃太郎
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「祐喜様、パレードお疲れ様です」

「お疲れー。…いつになったら生徒全員が鬼のスーツで覚えてくれんのかな?」

「それは暫くないと思うぜ。なんせ幼稚舎からしてきたからな」

「うぇー。…まぁ最近は馴れたからいいけど」

「さすが祐喜殿です!」

「何がさすがなのか分かんないし…」


彼、桃園祐喜は日本でメジャーな童話である“桃太郎”のモデルになった退鬼師の生まれ変わりだ。

十八になる誕生日までに呪いをかけた鬼をすべて攻略しないと、祐喜は死んでしまうらしい。

最初は信じていなかった祐喜だが、四人の鬼を攻略した今では、信じるしかない。


毎日の恒例行事であるパレードを終えて、祐喜は雪代、咲羽、雅彦と一緒に帰宅していた。


「痛っ」


突然、祐喜は眼に痛みを感じた。

小さく叫んだ祐喜を心配して、咲羽が話しかける。


「祐喜、どうした?」

「いや、急に眼が痛くなって…」


咲羽が祐喜の眼を覗いた。

原因が判ったのか、咲羽は微笑んだ。


「お前、眼が覚醒してる」

「へ?それって合宿の時みたいに?」

「あぁ。何かあるんじゃねえか?」


祐喜は周りを見渡すが、特に何もない。

いつも通りである。

変わった所は………………


「…………あった」


何故か、校舎の壁が歪んでいた。

しかも、中は真っ暗で何も見えない。

祐喜は顔を引き攣らせながら叫んだ。


「怖ぇよ!」

「あれは何でしょうか?」

「誰か隠れてるんじゃね?」

「バカ猿っ、そんな訳があるか!!」


咲羽に対する雅彦のツッコミを聞きながら、祐喜は何か風を感じた。

外だから風が吹くのは当たり前だが、普通の風と違う気がする。

この感じに覚えがある祐喜は、嫌な予感がしてきた。


「雪代、咲羽、雅彦。早く帰ろう!」

「ですが祐喜様。あれはいかがなさいますか?」

「放っておいていいのか?」

「何か嫌な予感がするんだよっ」

「祐喜殿、早くこちらに!風が強くなってきましたよ」


雅彦に頷いて、祐喜は進もうとするが……


「えぇー!?進まないんですけどぉ!!」

「祐喜様!」

「祐喜!」

「祐喜殿!」


三人が手を伸ばすが、祐喜はその手を掴めない。

風は弱まるどころか、ますます強くなる。

どんどん、自分が歪みに近付くのが分かった。


「ちょっ、吸い込まれる!」


祐喜は引き寄せられているにもかかわらず、何故か三人は引き寄せられない。


「祐喜様!!」


雪代の悲痛の叫び声を聞いたのを最後に、祐喜はとうとう歪みに引き込まれた──。








〜リアル桃太郎〜








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