Gift
□感謝のキモチ
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全てを終えて、白雪は近衛四人と共に自室にいた。白雪の向かい側には蘇芳と琥珀が座り、青磁と黒曜は二人の背後に立っている。
白雪は四人の顔を見て、柔らかい笑みを浮かべた──。
〜感謝のキモチ〜
「みんな、今まで本当にありがとう。心からお礼を言うわ」
「何だよ、それ。今生の別れみたいな言い方するな」
青磁は白雪に悪態をつく。彼の気持ちを理解している兄弟は苦笑した。
「お兄ちゃん、偶には素直に話したら?」
「…琥珀、顔が笑ってるぞ」
「青磁、琥珀。静かに」
「黒曜の言うとおりだ。白雪が話せないだろう?」
長兄である蘇芳がまとめて、四人は改めて白雪に注目した。
「ありがとう、蘇芳。蘇芳には最初から本当にお世話になったわ。ありがとう」
白雪が微笑むと蘇芳は照れくさそうに頭を掻いた。
「青磁には蘇芳以上に迷惑を掛けた気がする」
「気がするんじゃなくて、事実だろ」
「もう、私の話を聞いてよ。…礼法がここまで出来るようになったのは、青磁のお蔭よ。ありがとう」
青磁は僅かに頬を赤く染め、そっぽを向いた。
「琥珀には色んな知識を貰ったわ。…ありがとう」
“ありがとう”の言葉に様々な意味が込められている事に気付いたのは、琥珀だけだった。
「うん。どういたしまして。これからもよろしくね」
琥珀は白雪にニコリと笑った。
白雪は頷き、次は黒曜に礼を述べた。
「黒曜は私を何度も癒してくれたわ。あの時も命掛けで私を救ってくれた…。本当にありがとう」
「白雪、俺の方こそありがとう。君が笑ってくれるから、俺たちも幸せなんだ」
さらりと言う黒曜に、白雪は顔を赤くした。
それを見て、琥珀は黒曜の脇腹をつついた。
「黒曜、僕が恥ずかしくなった」
「…?」
「琥珀は置いといて、七樹は何処なんだ?」
青磁が白雪に問う。
白雪と共に神杖国を救った七樹は、現在八公に謝礼を受けている。
そろそろ終わる頃だ。
「もうすぐ来ると思うけど…」
白雪がそう呟いた時だった。
「おい!コイツをどうにかしてくれ!!」
突然大声が聞こえたと思ったら、七樹が扉を荒々しく開けて立っていた。
七樹の突然の登場に、五人は驚く。
「七樹、どうしたの?」
「変な奴がうるさいんだ!…来た」
「七樹ーっ!あれから進展は…お、久しぶり」
現れたのは、元刑部卿佳春だった。
彼の後ろから、道延も姿を見せる。
「佳春!おまえはもう少し静かに…これは白雪さま。お騒がせして申し訳ありません」
道延が頭を下げる。佳春はそんな道延を放って、七樹を質問攻めにする。
「七樹、嬢ちゃんとはどこまで進んだんだ?」
「うるさい!俺に関わるな!!」
七樹は鬱陶しそうに手で佳春を払う。
しかし、佳春は訊くのを止めない。
それに気付いた道延は、佳春の耳を引っ張った。
「おまえはさっさと出て行け!邪魔だろうが」
そしてそのままズルズルと引きずって行く。佳春は引きずられながらも相変わらず七樹に質問をしていた。
やがて、二人が見えなくなると、七樹は溜め息を吐いた。
「随分疲れてるのね。ずっとあんな感じだったの?」
「いや、最初は賀宗って爺さんが話してたんだが、途中であいつが乱入してきたんだ」
「相変わらずだね、お二方共」
「…そうだな」
琥珀の言葉に、今度は青磁が溜め息を吐いた。
蘇芳と黒曜は苦笑する。
白雪は、灰桜に話し掛けた。
「灰桜、貴方も今まで本当にありがとう!これからも一緒にいたいわ」
『俺もだ、白雪』
灰桜の答えに、白雪は微笑した。
白雪は四人の近衛と灰桜に、八公は七樹たちにそれぞれ感謝の気持ちを述べた。
彼らの気持ちは、それぞれに届いただろう──。
「みんな、本当にありがとう!」
*fin*