*

□裏娥楼へおいでませ
1ページ/1ページ






その日、吏部侍郎李降攸は友人である藍楸瑛に連れられて、コウ娥楼の最奥にやって来た。



本当は初めての人間は入ったはいけないのだが、楸瑛の口利きで入れる事になったのだ。




「降攸…此所での相手は美しい男性たちだから女人が苦手な降攸でも大丈夫だよ。」



「…ふざけるな!お前が無理やり連れて来たんだろうが!俺は帰る。」


「駄目だよ。コウ娥楼で何もせず帰ったら恐いよ?」



妙に真剣な表情で言う楸瑛に、降攸は何も言えなかった。




しかし楸瑛は、降攸を放って何処ぞに行ってしまった。






その頃楸瑛は、至高の5人の一人と体を重ねていた。



相手をしていたのは銀色の髪をした中性的な人物だった。


この場にいるのだから男のはずなのに、知らない人間が見たら女人だと思えそうだ。




「……白樺…。愛してるよ。」

楸瑛は愛しそうに相手の名を囁く。


白樺は小さくクスリと笑うと、楸瑛に妖しげな視線を送った。




「ふふ。…そんな事言って…本当は柳と床を共にしたいのでしょう?」


楸瑛の瞳が驚きに揺れた。



「何で……」



知って…と続く前に、白樺は楸瑛にそっと唇を寄せて離した。




「私たちを甘く見ない事ですね。共に寝てる相手の気持ちを汲むなど、息をすりより易しいことですからね。」



楸瑛は苦笑いを浮かべた。



「そう…ですか…。」



「ふふふ。まあ、許してあげますけどね?今夜だけは…。」



白樺の言葉に楸瑛は、ほっと息を吐いた。






















その時降攸は、一生に一度の選択に迫られてた。




降攸に見せられたのは、たくさんの人間の絵姿の載った冊子。
その中から相手を選ばないといけないのだ。




降攸が頭を捻っていると、店の小間使らしき者が慌てたやって来た。





その者が言うのには、至高の一人が待っているから行く様にとの事だ。




降攸は訳が分からないが、とりあえず案内された場所に向かった。




他の室とは格段に差の見える豪奢な作りの室。




至高が何なのか知らない降攸でも、それが特別なものだとはわかった。







 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ