混沌は眠りの先に
□第一章 −平穏な日常−
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「…しっかし…あっついなぁー…」
森林の中、ひとつの声がした。
まだ少し幼さが残る、14、5歳の少年が、肌を伝う汗を拭い不満を口にする。
今の気温は32度。
まだ日は上り続けており、正午にはもう少し時間がありそうだ。
少年は、後ろで軽く束ねた髪を指で弾き、首元の暑さを一瞬紛らわす。
服は、大して豪華そうな装飾もなく、いたってシンプルに動きやすさを重視しているようだ。
その中で目立つのが、左手の中指にある、指輪。
それは、蒼い宝石を持っており、深い輝きを放っている。
少年はその指輪を見つめ、少し表情を和らげた。
ピィーーーー
甲高い、しかしそれでいて心地の良い鳥の声が響いた。
少年は顔を上げてそれの姿を探す。
眩しさに細める目が、黒い大きな影を捉らえた。
人よりも数倍はある巨大なその姿を。