Saign's-2-
ーヴァチカン市匤ー
そこはとても狭く・人口密度が高く・何よりも"主"への敬虔な祈りと罵り合いの罵倒が混同している、不協和音のようなアンバランスさが同居し、極めて"平和"や"和平"、"清らかさ"が欠如している、危険な地帯であった。
そしてその地の中枢に、彼女・・・M・レイ・アシュフォード。。。は身を置いていた。
彼女のする事は毎日ほぼ決まっていた。
5時に白鳩の羽音と共に目覚め、日の出と共に朝の祈りを済ませ、"何事も無ければ"愛用品の長銃のチェックと磨きを済ませて根詰まりが無いか確認したあと、弾薬を100%に装填しておく。(まあその長銃の弾倉が100%以下になる事は先ず…というか確実に無いのだが・・・)
そして、彼女は「窮屈で動きづらくて堪らない」防弾服に身を包み、カラスが獲物を狙うかのような…漆黒の甲冑に身を包む。
カラス・・・。M・レイ・アシュフォードはカラスを殊の外嫌っていた。カラスは死者の羽根、死者とあの世とを繋ぐ橋渡し役だと感じていたからだ。そして逆に、白鳩を殊の外愛した。白鳩は病に弱く、常日頃気に掛けていなければ簡単に亡くなってしまう…か弱い存在であり、また、彼女が愛する主・イエス キリストを体現する"平和を愛し、自由を翔ける和平の者"だからだ。
ー 平和を愛し、自由を翔ける、和平の者 ー
アシュフォードは顔を洗って、クスリと微笑んだ。
「平和を愛し」？では、この長銃は一体なに？
「自由を翔ける」？？壊れ掛けの姿見を見て、自身の首に着けられているチョーカーを伏せ目で仰ぎ見た。そこには、紅い電灯が微かに光り続け、体温・心拍数・血圧etc...様々な「M・レイ・アシュフォード」の「生存値」を保証するベクトルが定期的に本部へと送られるようにメカニズムされたチョーカーが着けられていた。
ーこれが有る限り、私は私の生きたいように生きることなんて、出来やしないのよ。。。ー
昨日はチーム・ファティマでの「出動」は無かった。どうか今日も…"何事も"有りませんように。。。
□表紙を開く
□解説を読む
□作者に感想を送る