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□あわよくば、君事態が欲しいけど
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フカフカのクッションに上質のソファーに身を委ねながら、お気に入りの小説を読む。あまり人の出入りが少ないせいか綺麗に掃除されているの何処か埃っぽい空気を吸い込みながら、はっきりしない意識の中 目の前の文章をまどろんだ瞳で追っていく。
あぁ、このまま寝ちゃおっかな。と思案するも、そうもいかない現実を考えて意識を戻そうと体制を変えるものの、そう簡単にはいかなかった。
お気に入りの本を読むのも、もう睡魔を促す要素だと思い相変わらず埃っぽい空気を一つ吸い込み、天井を仰ぎながらそれを盛大に吐き出した。
「随分お疲れのようだね」
声のした方を向こうと首だけ向けてみると、案の定そこにいたのは、
「征十郎……」
「?、なんだ?」
ここの家主の息子である、征十郎が立っていた。
なんとなく彼の名前を読んでみただけで、別にこれといった用は無く、なんでもない。と言って視線をまた本に戻した。
まるで自分の家のように寛いでいる自分だが、ここは実は私の家では無い。
大きな御屋敷のような外観で、書庫のような部屋のある家が、わたしのような一般人の家なんぞある訳がない。
そう、先ほど言った通りここは、彼、赤司征十郎の家である。
彼とはいわゆるご近所さんというもので、幼馴染という関係である。
ここの書庫は、小さい頃から彼の家にお呼ばれされていた、私の見つけたお気に入りの場所である。
「またその本を読んでいるのか」
「お気に入りですから」
彼が近くに来る気配を感じながら、視線は文字の上を流れて行く。
どうやらさっきの眠気は彼の登場に怖気づいたのか何処かに行ってしまったようだ。
トサッとすぐ横に何か重い物が乗った振動を感じようやく本から視線だけ上げると、すぐ隣に征十郎が座っていた。
なんだ。と視線をまた本に向け直したが、追い待て。と今度は顔ごと征十郎の方に向けた。
「…なんか近くない?」
私が征十郎の家に来ることは良くあることで、そのままこの部屋に入り浸るのもいつものパターン。
そして、あたしがお気に入りの本を読んでるとこに征十郎が来ることも良くあることで、私が座ってんだから、彼が座るのも当然のことなのだが。
彼はいつも決まって私の目の前の席に座る。
座るのだが…、おいどうした。
いつものことに異例が生じ、疑問を隠せないでいる。
「そうか?」
そう言って微笑する幼馴染は何を考えているのかが分からない。
肩と肩が触れそうな距離に居て、これを近くないと言えるのだろうか、それは否だろう。
彼の存在をこんなに近くで感じたことはあっただろうか。いや、まあ、幼馴染なんだから過去の一つや二つはあっただろうが。
なんだかんだ考えて、自分が"いつも通り"から外れってっている現状に動揺しているのに気付いた。
そんな異例の中、彼は余裕そうに笑っていて、私だけが動揺しているのがなんだか悔しくなり、何も言わずまた視線を本に移した。
すぐ近くに感じる、征十郎の存在。
彼のちょっとした動作や呼吸の一つ一つにも意識してしまうようなこの距離間で、さっきよりも動揺を感じてきた自分の心臓。
え、ちょ、ほんとになんだよっ!?
本の内容なんか頭に入ってこなくて、彼の存在だけを意識してしまう。
幼馴染相手に何考えてんだかっ。
「名前」
耳元で声がした。
クッションもお気に入りの本も落として、いち早く彼との距離を取るために立ち上がった。
が、捕えられた私の右手。
「名前、何で逃げる?」
「バ、バカっ!!なんでもどうもないでしょ!?いきなり何よ!?」
「なにがだい?」
「っ、征十郎!」
クスクスと笑いだす彼。私をカラかっているのは明白だ。そんな彼の事をジトーと睨んでいると、笑いが収まって来たらしい彼は、すまない、冗談だ。と、余裕の微笑をしてくる。そして、私の腕はまだ掴まれたままだ。
「いや、ただ側に居るだけじゃもうダメだと気づいてね」
そう言った彼の表情は穏やかで、幼馴染の贔屓目を無しにしても、世間からイケメンの顔に全身の血がゾワッと騒ぎだした。
しかし、私にはまだ彼の言っている事が理解できない。だから、なんだ。
「…なにがダメなの?」
素直に疑問をぶつけてみた。
私の疑問に少し反応した彼は、ちょっと考えるそぶりを見せて、また続けた。
「言葉を変えよう、ダメなんじゃなくて僕がもう耐えられないんだ」
え。
余計に分からなくなったぞ、征十郎が耐えられないってなんだ。なににだ。
今までの日頃の行いを回想していると、繋がられている右手の力が強くなった。
「だからつまり」
そのまま右手は彼の方へ惹かれ、それに伴って私の身体も彼の元に引き寄せられる。
気付いたら、唇に何か温かくて柔らかい物を感じ、目の前には目を閉じた征十郎の長いまつ毛が見えた。
え。え。えぇっ!?
今の現状を理解し、すぐに離れようと頭だけでも話そうとするが、後頭部に彼の手が回り、離れた唇がまた繋がった。
彼の啄ばむようなキスに翻弄され、頭が回らない。
これといったアクションが取れず固まっていると、ペロリと征十郎のしたが唇を掠めた。
そこでやっと脳が活動を再開し、渾身の力で征十郎と身体を離した、私達の距離は私の腕一本分の長さで、後頭部にはまだ彼の手がある。
「ちょっ、なん、で、いきな、りっ!」
脳が再会したもの、まだ頭と口が繋がっていないようでわたしの言葉はシドロモドロだ。
そして目の前にいるこいつは相変わらずで、
「僕は名前とこういう関係になりたいんだ」
「は?」
つい口を突いて出てしまったのはそんな言葉で、心の中で自分を呪った。
「今まではただ側に居るだけで良かった、名前の笑顔が見れれば良かった、実際それだけで満たされてたし、満足していた」
だけど気付いたんだ。そう言って私を見つめる彼が別人見えた。
「好きって言って、それ以外なにもいらないから」
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初赤司夢を書かせていただきました。
かかったじかんは1時間半という自分ではhighspeedの所要時間。
いろいろと訳の分からないところがあると思われますが、どうかご容赦下さい。
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