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□そんなことだけで、
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※ロード・トゥ・忍者の別世界観になっています。





イライラ、イライラ。


「なぁ、名前これからどこか出掛けようぜ?」


ある午後の昼下がり、今日は快晴で外に出るにはちょうど良い日だと思い。散歩がてらなんの目的もなく外に出てみたわけなんだが………嫌な奴に 捕まってしまった…。


「うるさい、近寄らないでていうかどっか行って」

「冷たいなぁ、俺は今日名前に会えてすごく喜んでるっていうのに」

そう言ってウインクを向けてくるこの男は頭が沸いているんじゃないかと心底思う。
ただし、私のそんな思いとは裏腹に奴のこういう言葉に身も
心もとろけさせてしまう女子がいるというのだから理解不能だ。

私がそんなことを思っている間にもペラペラとよくしゃべる男に頭が痛くなる。

こんなにも私を悩ませる男。
うちはサスケは、今日も胡散臭いほどの笑顔を振り撒いていた。



「私は全然嬉しくない寧ろ気分が悪い、そういうことは他所で言って」

「相変わらずつれない」


「まぁそんなとこも可愛いけど」と微笑んでくるサスケ。

頭蒸かす前に私がそのチャラけた頭吹っ飛ばしてヤロウか!?
背中に悪寒が走り抜け、身震いをする。
嫌だ……。もう何が嫌なのかも分からないが、早くこの場から消えたい……。


「あっ!サスケくんだ!」
「えっ!?どこどこ??」
「サスケくーん!!」

わたしが心底げんなりしていると何処からか、ピンクを孕んだ黄色い声が聞こえてきた。
なんだろうとか考えるまでもなく、予想通りこのチャラ男に向けられている歓声なわけで。
こちらに駆け寄ってきた女の子達の視線が軽く痛い。
いやいや私は好きでこんな奴と一緒にいるわけではないからっ、寧ろ迷惑ですからっと誤解を解きたいくらいだ。
まぁ口を開くと余計に視線が痛くなることは分かってるのでそんなことは言わないが。

チラリと隣に並ぶサスケの顔をなんとなく伺ってみる。
ほらほらあんたの大好きな女の子ですよーと心の中で思ってみたり。

…………。



「やぁ、子猫ちゃん達」


甘ったるい声と一緒にあの胡散臭い笑顔。
いつも通りのチャラ男炸裂なわけなんだが……。

さっき一瞬、ほんと一瞬なのだがいつもと違う顔をしていた。
これは忍だからこそ気づけた一瞬。
ちょっと残念そうな何かに諦めたような苦しいようなそんな表情。


「サスケくん、これから私たち近くの喫茶店に行くんだけど一緒にどう?」

女の子の集団の中の一人が、猫なで声でくりくりとした目を上目遣いで可愛らしくサスケを誘う。
真似しようなんて思わないが私には到底出来ない"女"の使い方で、嫌悪感や劣等感を抱くでもなくただ単にそれを見ていた。


「そこの人も、別に一緒でも良いけど?」

「は?」


可愛らしい様子のまま突拍子も無い提案をしてきた女の子に、つい声が出てしまった。
急いで手で口を押さえるものの、今の私の顔はさも間抜けた顔をしていただろう。
クスクスと小さく微笑む女の子。
それすらも可愛い笑顔で、あぁこういう子を男は放っとかないんだろうなぁなんて考えてみる。
まぁ、考えてみるが別にそういうふ子になりたいとは思わない。
ていうか、一緒にってなんだ一緒にって。え?つまりは私もサスケと取り巻き連中の一人だと判断されたのだろうか?やめてくれっ!鳥肌が立つ!悪寒がはしる!!
私はそんな恋愛脳女になんかなりたくない。私は忍だ。国の為に命を掛ける木の葉の忍だ。
そんじゃそこらの女の子と同じにしないでくれ。
ただの取り巻きと一緒になんかしないでくれ…。





「いや、遠慮させてもらうよ。名前は子猫ちゃん達とは違うんだ」






ひたすらにサスケを見てみる。
今はなんだか驚きが一杯で言葉が出ない。
奴が"子猫ちゃん"と呼ばれる女の子達からの誘いを断ったりましてやあからさまに機嫌を損ねる様なことを言うなんてありえない。
だけど今そのありえない状態に陥ってる。


「っ!…そ れ、どういうっ!」


可愛かった女の子の顔が憤ってく。
赤くなった顔でサスケを睨む目が揺れた。
その目線の先には紅く渦巻く瞳。
うちは一族に伝わる"車輪眼"。


「…あぁ、そっかわかったわ……また…今度ね……」


そいういとフラフラと引き返していく女の子の達。

こいつ今幻術使いやがったよ……。

女の子の達がいなくなったことでまた奴と二人っきりなる。


「で、名前 俺とこれからどっか行かない?」


そう言ったサスケはまた胡散臭い笑顔に戻っていて、相変わらずの甘ったるい声で囁いてくる。
奴と二人っきりなんて最悪だ。
慣れることなんて絶対に無いと思う。
最悪だ。最悪なのに……。


「一楽でラーメン一杯ね」

「え?」

さっきの笑顔が一気に崩れて、驚きの表情がこちらを覗いてくる。
そんな顔は初めて見たわけで、なんだか悪戯が成功した子供のような気分になった。


「もちろん、サスケの奢りだから」


あぁ多分今私は、今日一番良い笑顔をしてるんだろうなぁとか思いながら、まっすぐ一楽に歩いて行くのだ。






今の気分はまぁまあ悪くない。






Fin.

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