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□Mutual understanding
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「…なんであんたが此処にいるの」


週末の仕事終わり、時間は8時頃をさしている。
一週間の疲労がなかなかに溜まった体を早くベットで休ませたいと思い早々に仕事を切り上げ自宅に帰ってきたわけなのだが、そのベッドには先約がいた。


「なに?今日 帰り早いじゃん」


ベッドに寝そべりながらPDAを弄っていたのは、折原臨也だった。

彼とは、高校時代を共に過ごした(というか絡まれた)同級生なのだが、こんなふうに部屋に自由に出入りしたり、ましてや恋人のような親密な関係では断じてない。

そんな彼が私の家の中にいることは勿論驚くべきことであって、何故私が普段帰ってくる時間まで知っているのかが怪奇だ。

そして、今彼に一番聞きたいことは、


「どうやって入ったのよ…」
「どうって、ドアからだけど」


さも当然そうに答えてくる臨也。

そりゃそうでしょうよ。
でも、記憶が正しければ私は確かに今手の中にあるこの鍵でこのドアを開けたのだ。


「あぁ、前に来たときに合鍵作らせて貰ったよ」


臨也は、私の言いたいことが分かったようでポケットからチャラチャラとチェーンに繋がれた鍵を私に見せてくる。

実は彼が此処に来るのは初めてではない、いつもは部屋の前で私が帰ってくるまで待っている。

今考えてみると私が帰ってくる時間帯まで部屋の中で今のように寛いでたんじゃないか……。……不法侵入だ。


臨也がベッドで私が玄関で突っ立ってるのもなんで、一つ溜め息をついてから靴を脱いだ。

「…で、今日はなんなの?」

聞きたくないが、彼を早々に帰すには聞くしかない。
今の私はさぞ嫌々な顔をしてるだろうと自負できる。


「あ、冷蔵庫の中のケーキ賞味期限切れそうだけど分かってんの?早く食べなきゃダメになるけど」


またもや、私の質問に掠りもしない返答を返してきた。

そもそも、人ん家の冷蔵庫勝手に開けてんなよ。てか、ケーキの存在ちょっと忘れてたよ。

どうも臨也とは、意思の疎通というものが出来ないようだ。
同じ人間だというのにどうしてこうも伝わらないのか疑問に思う、というわけでもなく相変わらずのうざさだと認識することにした。


「なんか名前の部屋って落ち着くんだよねー」


そう言って臨也は、寝転んでいた体制を胡座に変えてこちらを見てくる。


「なんて言うの?狭いとこほど落ち着くとかいう人間の習性的な感じかなぁ」

「どうせ私の部屋は狭いですよ」


うざい。素直に言う、うざい。
自分の部屋が狭いなんて分かっていたことだが他人からそれを言われるのはやはりいい気はしない、折原臨也からならなおのこと。



「今の仕事やめて俺のとこ来れば良いのに、そしたらこんな狭いとこで無理くり生計立てずに好きなことして自由に遊べるし、非日常な生活を送れるというおまけもくる」


「別にそういうの要らないから平穏に暮らせてればそれで私は十分なの」


「分からないなー、平穏のどこが良いんだい?平穏なんて平凡でつまらないじゃないか、なんの刺激も無い人生なんて俺はごめんだね」


「はいはい」



突然な臨也の登場で今になって忘れていた疲労が戻ってきた。
あぁ眠りたい。今すぐベッドにダイブしたい。が、そのベッドには臨也がいる。

コートを脱いで持っていた鞄を置いて、重い体をさてどうするかと考えてると臨也が自分の隣をポンポンと叩いた。
隣に座れということだろうが、それは少し憚れるとこが……。


「何してんの、ほら早く」

と、強引に座らされてしまった。
眠さもあり抵抗する気にもなれない、まぁ臨也だし大丈夫か。


「随分疲れてるね」

「そりゃもう、こっちはそっちとちがって週5回好きな時に好きなようには動けない仕事してるからねぇ」

皮肉が入るのはもう八つ当たりだ。
お尻から伝わるベッドの柔らかさが眠気を誘ってくる、頭が重く感じてきた。


「はは、凄いシワっ」


眠気と葛藤していると眉間を小突かれた。
誰のせいよっと臨也に言い返したらふと思った。
臨也は今私の隣に何もせず座ってるだけだ、なにかしてるといったら私の方を見ている。

「…臨也は何しに来たの?」

ほんとのほんとに疑問だ、 よければ用事を済ませて早く帰って欲しい。


「……用がないと来ちゃダメなわけ?」

「……え?」

えーと…、えーと…、頭が上手く回らないつまりはーえっと……

頭をフル回転させてるといきなりからだが後ろに倒れた

え?え??

原因は左肩にかかるこの腕のせいなのだろうけど…
その腕が繋がってる人物に驚きが隠せない。

「臨也何考えてんの?」

「なんだと思う?」

その顔はニヤニヤと楽しそうに笑っており間近に迫っていた。
いやいや、私に臨也が考えてることなんて分かるわけがない。
しかも、このれっきとした迫られている現状をどう回避するかも思い付かない。


動揺を隠せずにいると、臨也の顔をもう鼻の先にあった。
あ、やばいっ。

思わず目を瞑る。
すぐに頬に何かが触れ離れていった。

「毎回毎回、名前に用事があってわざわざ此処まで来る俺だと思う?」

「……」

彼は何を言いたいのだろうか?

「もうそろそろ気付いてもいいんじゃない?」


やっぱり、私と臨也には意思疏通は無理そうだ。


今は、頬ではない場所に彼の唇が落ちてくるのを感じることしかなできかった。





Fin.

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