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□狂い桜
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花の終わりは、
あまりにも静かで 残酷だ。
どんなにその寿命を伸ばそうと足掻いても、時の流れには逆らえずその命を落とすのだ。
また、人も同じ。
ありとあらゆるものに呑まれ 奮起し感動し繋がりを作り絶望する。
神という者に与えられたのであろう、私達の命は儚くも 明るく 脆い。
与えられた命の期限も、必要な時間の半分さえ無い。
それでも、人は生きる。
後悔し、絶望し、涙を落とし、狂っても人は光を求めもがき続ける。
他人を信じ認め繋がろうと、他が他を求めるのだ。
貪欲な人の世。
いや、世界は貪欲で回っているのかもしれない。
私はその貪欲な世界で生きている。
死ぬまで生き続ける。
私もまた 光に手を伸ばしてーーー
人は 生きる。
今日も平和な江戸かぶき町。人々で活気づき誰もが平和に時を過ごすこの町でただ一人、男が自室で頭を垂れで佇んでいた。その姿はまるでこの世の終わりを告げられたような有り様である。
「ちょっと!銀さんどうするんですか!?」
「今回ばっかりはほんとにヤバイあるね!!」
眼鏡を掛けた青年ーー志村新八と、なまりのある言葉使いをするチャイナ少女ーー神楽に責め立てられるその男ーー坂田銀時:通称銀さんは 黙ったまま沈黙状態で声を唸らせていた。
ことの次第はさかのぼること3日前。
彼等の万事屋としてのある仕事、敵との交戦で 幕府の政権を握る皇族の地位を持つ天人の屋敷をぶち壊し、そんでもって幕府の建設する大規模な計画の化学施設を 破壊してしまったのだ。
いや、そこまではまだ良いとしよう。彼等はそんなこと日常茶飯事でやってきていたのだから…ただ、今回はそうはいかない…何故なら今まで逃げていたことのつけがそっくりそのまま反ってきてしまったのだから。
「……おいおいおい、いくらなんでもよぉ」
顔をふいた状態のままヨレヨレと言葉を繋ぐ銀さん。
「んな額、払って返せる訳ねぇーだろぉぉ!!!!!!」
そう☆!破損・粉砕した、まぁつまりは彼等が今まで壊してきた全ての物の多額の弁償金をとうとうお偉い方からの突き付けられてしまったのだ☆
「そんなこと分かってますよ!だからほんとにどうしなきゃいけないかをですねぇ!ってちょっとあんた!!何いきなり荷造りしちゃってんの!?それ逃げる気だよね!?絶対1人で逃げる気だよねェ!?」
新八の言う通り、せかせかと自分の身の回りにあるものを荷造りしていく銀時。
その荷造りが終わった瞬間部屋の出入口で止まった彼は、顔を新八達に向けないままさもドラマのちょっと泣けそうで泣かないだけど変に涙脆い人には何故か泣けちゃう感じの感動シーンのように 話す。
「…新八、神楽…今までなんだかんだ言って楽しかったぜ…俺のことはもう…探さないでくれ」
「イヤイヤイヤイヤ!!!!!!!!!!!何そこかっこよく決めようとしてんですか!!全然、探しますよ!!むしろ、行かせませんよ!!」
「そうあるね!!こんないたいけな子供たちに借金残して紛失なんて大人のすることじゃ無いあるね!!」
ブーブーと批判を浴びせ今にも走って逃げようとする銀時を止める二人。
「いやだー!!俺はここをおさらばすんだぁい!!あんな額用意出来るか!あったってやらねぇよ!!どうせ政界の天下りやらなんらかに使われちまうんだ!んで、そいつらの肥やしと化すんだよ!!俺は払わねぇぞ!ぜってぇ払わねぇぞ!!」
「ちょっ!銀さんとにかく落ち着いて下さい!!」
交戦攻防およそ30分後。
「……。」
「……。」
「……。」
やっと落ち着きを取り戻した3人は机を囲みながら無言で座り込んでいた。
「で、どうするんですか。このままじゃ僕ら一生監獄行きですよ」
ようやく発せられた言葉にビクッとなる銀時、彼等は借金を返済しなければムショ行きを勧告されているのである。
「そうね、ずっと不味い犬の残飯みたいなの食わされて虫けら見たいに扱われて死んでいくね」
「いや、神楽…それは違うぞ。」
黙りを決め込んでいた筈の銀さんが重々しい空気を纏い話始めた。
「一銭も無くした浮浪者たちは帝〇みたいな組織に地下に引きずり下ろされ借金返済まで一生奴隷のように地下で鉄鋼の仕事をさせられて、地上に戻ることと引き換えにブレイ〇メンロードを歩かされー」
「二人ともテレビの見すぎですから!!」
いやいやあんたらそんな話してる場合じゃないでしょうが…現実見なさいよ。
にっちもさっちもいかないこの状況どうすんの!?
「…!…待て…、まだ一つ方法があるかもしれない………」
「ほんとですか銀さん!?」
「嘘だったら承知しないあるね!!ぬかよろこびとかマジであり得ないあるよ!」
そんな2人の声を無視し自分の考えにふける銀時。
もう、あいつしかいねぇよな……一か八かだが…掛けるしかないな………
その場を静かに立ち上がった銀時は前をまっすぐに見つめ動き始めた
「…銀ちゃん?」
「…銀さん?」
いきなりの銀時の行動に驚く新八と神楽。自分達の対象は一体どうしたのだろうか?
「神楽、新八荷造りしろ」
「はい!?だから逃げるなんて無理ですよ!!」
「バカ野郎」
「「……!!」」
「逃げんじゃねぇよ、見つけに行くんだ」
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銀時たちが万事屋を出て一日後。
木々の生い茂る山中、人っ子1人もいないこの静かな森で3人と一匹が歩いていた。
「銀ちゃん、あとどのくらいあるね?」
そう言ったのは定晴の隣を歩く神楽で、心底疲れている様である。
「うるせぇよ、あとちょっとなんだ我慢しやがれ」
返答したのは勿論銀さんで、その様子は神楽同様(いやそれ以上に)疲れきっているのが滲み出ている。
「ほんとにこんなとこに人が要るんですか?」
銀時たちはある人物を探していた探していると言っても、その人物を知っているのは銀時だけで神楽と新八は何も聞いていないのだが。唯一聞けたのは、この山奥に住んでいると言うだけ。
「まぁなぁ」
銀時の返答に納得いかなさそうに眉をひそめる新八。
疑うのも無理は無い何せ、人気がまったくない森の中 まだ昼前だと言うのに生い茂った木の葉のせいで道は薄暗く、今自分たちが歩いている所さえ道と呼べるギリギリのラインだ。
そこで新八があることに気付いた。
「銀さん、さっきから気になってたんですけど、その背中に背負っている大きな荷物は何なんですか?」
彼の言う通り、銀時の背には彼の背を一回り上回るようなリュックを背負っている。
「これはなぁ……俺達の命を繋ぎ止めておくモノだ……」
「?」
「?」
またもや、訳の分からないことを言い出す銀時に首を傾げる新八たち。
すると、視界が次第に明るくなってきた。この森の出口が見つかったのだ。
「あっ!出口あるね!!」
喜びの声を出す神楽は、定晴と共に勢いよく走っていく。
「神楽ちゃん!」
それを後ろからそそくさと追いかける新八、ふと後ろを向くと神妙な表情をし額にはうっすらと汗を浮かべている。
よく彼はこんな顔をしているのだが今回はいつもと違って真剣さが帯びていた。
銀さんは何を怯えてるんだ??? そう思った刹那、彼等はとうとう森を抜けた。
目がチカチカと痛みが走るなか、彼等は1人の人物を目にした。
そこにはそこそこの大きさの瓦屋根の家に、小さな庭に広がる桜の花びらを眺めながら縁側のほとりに腰を掛け片手に持つ杯で酒を含味する女がいた。