ノーマル短編集
□ノーマルSS
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『飛べない鳥』『青空に恋した月』フリーワンライ企画参加。
「きみに恋した僕はさながら飛べない鳥。おお、その大いなる愛で僕に翼をさずけておくれ……!」
「レッ○ブルかよ」
「だっさ。委員長ドン引いてんじゃん」
彼のお友だちに冷たい視線を向けられるなか、彼は心底真面目な表情で私を見上げます。あ、彼の背が私より低いわけではなく、彼はいま私の目の前で片膝をついているのです。
もともと赤面症なのに、私の頬がさらに赤く、火がついたように熱くなっているのがわかります。
「わ、私は」
「あ、大丈夫っすよ、真面目に受けとらなくて。適当に処分しとくんで」
「ほんとバカですいませんね。玉砕しないとあきらめられないって言うもんで」
なんとか想いを告げようとした私に、お友だちのストップがかかります。口下手なばかりに、いつもこうなのです。たいていは好意的に受けとってくださるので、ありがたくは思うのですが。
困って彼を見つめると、続けてと言うように軽くうなずいてくれました。それに励まされ、少し息を吸って音をのせてはき出します。
「私は、青空に恋した月なのです」
「まさかの同類!?」
お友だちの叫びが放課後の教室に反響します。
「いやあの、叶わない恋をしているという比喩でして、けっして自分の容姿を誇大表現したかったわけでは」
「つっこみたいとこ、そこじゃないんだけど……」
「え?」
あわてて弁解しましたが、どうやらあきれられてしまったようです。なにがおかしかったのでしょうか、うろたえていると彼が口を開きます。
「外野は気にしなくていい。それはきみも僕に好意を持っているととらえても?」
「は、はい」
「嬉しい。大切にするよ、マイスイート」
うなずけば、彼は優しく微笑んでくれました。お友だちがそろって頭を抱えていることは、彼の言うとおり気にしないことにします。
END