ノーマル短編集
□ノーマルSS
2ページ/87ページ
びしゃあ。
「この、ドロボー猫!!」
うわぁ、ドロボー猫とか初めて言われた。とっくに死語かと思ってたのに。そのまま怒りに肩を震わせて店を出ていこうとしたので呼び止めた。
「お勘定、自分の分は払ってね」
頭にかけられた水をポタポタ滴らせたまま言う『ドロボー猫』に、さすがに気味悪さを感じたのだろう。千円札をテーブルに叩きつけ、そそくさと店を出ていった。
「あのぉ、お客様、タオルを……」
「あ、いいです。夏だからちょうどいい。ごちそーさまでした」
気まずそうな店員さんに、死語女が置いていった千円をそのまま渡し、店を出た。思った通り、炎天下の中では水をかぶった事が得に感じられる。
「涼し〜」
さて、また次の男でも探すか。
END
冤罪か悪女か。