戦国BASARAd
□光覚
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「主が我の気持ちに応えてくれた時の主の顔は、今でも鮮明に思い出せる」
『それは、ちょっと恥ずかしい』
「我は、主の髪も笑みも全てを好いておる」
「主は、こんな我を…未だ、慕ってくれておるのか」
『大谷さん…?あたりまえだって』
「たとえ、もう二度とこの目で主を見ることができなくてもか」
『ね、ねえ…さっきから、どうし』
包帯の間から見える大谷さんの目から止めどなく涙が溢れ出ているのが見えたから
それ以上何も言えなかった
「この病は、我から全てを奪ってゆく…
せめて、闇に呑まれる前に主の、名前の顔を見ておきたかった」
『まさか、目が…!?私はどこにも行かない!ずっとずっと大谷さんの隣にいる!』
すっと俯く大谷さんの涙を流し続ける目はとても、虚ろで
昨日みたものとは全く異なっていた。
神様は不公平だ
彼から、どれだけのものを奪えば満足するのだろうか
『大谷さん…!?』
彼の手を握って俯いていると突然抱きしめられた。
「…我は、名前を手放したくはない、しかし」
『何言ってんの…絶対に放さないで』
「放さぬ。しかし名前は後悔せぬか」
『するわけない、絶対に』
不公平な神様に代わって
私が彼にたくさんの幸せをあげよう。
私が彼の手となり足となり、目にもなろう。
小さく震え、涙を流す彼をより一層力強く抱きしめた。
「名前」