青の祓魔師d

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今から150年ほど昔
不浄王という、疫病をもたらす悪魔が現れ
日本中を蹂躙した。


明陀の祖、不角は
この剣に伽樓羅と呼ばれる火の悪魔を降ろし
その火の力によって
不浄王を倒したとされる。



以後、明陀宗は
代々に渡り、この剣を本尊とし

残った右目を封印して
俗世から遠ざけるのを固い掟とした。



そういうすべてのことを嘲笑うかのように
彼は私の前に現れた。


降魔剣をもらっていく
と言ったが、その後すぐに倒れてしまった。
既に彼は、大怪我を負っていた。

たぶん、立っているのも辛かったんじゃないかというくらいに。



その彼を、山の麓に捨てて来ようか
などとも言われたが、雪が降るような寒空の下
大怪我を負った人間を放りだす様なこともできず、私は彼を寺の中に入れ、看病しました。



目が覚めてすぐ、彼に降魔剣を手に入れて
何をするのかと尋ねると
彼は、子供を殺すと…そう言いました。


そんな外道に降魔剣を渡すなど
できるはずがない。


帰ってくれ

私が言うと

降魔剣をもらってからな
と言って寺中を走り出したんです。


走り続けて彼が開けた部屋
そこは、瘴気によって倒れた者を隔離し、護摩焚きによって治療をしていた部屋だった。



私たちがどれだけ身を呈しても、一向に彼らの治る気配はなく、むしろ悪化する一方だった
それを、彼はものの数時間ですべてを治したのです。

その中には、私の妻である虎子や、八百造の息子たちも含まれていました。


一体、私たちは何を信じ、この信仰を続けてきたのか。



感謝してもしきれなかった。
しかし、私の父は違いました。

父は、藤本くんを殺してしまおうとしていたのです。

父が守るのは、明陀であり、人命ではなかった。




その時、私は
蛻の殻を拝み、崇拝するのは止めて、戦う決心がついたのです。

だから、私は藤本君にその降魔剣を授けました。

これで仲直りだ。

彼が言ってくれたその言葉を私は今でもはっきりと覚えています。


その数か月後、「青い夜」が起こり
父は座主と明陀の本当の秘密を私に託して死にました。その秘密は本当に恐ろしいものでした。


どうか

どうか奥村くん

降魔剣を使って不浄王を倒してほしい
理不尽で無謀なお願いであることは承知の上です
しかしもし、もし私がお父さんのようなほんの小さな慈悲の心を向けてくれるなら
私はそれにすがりたい


ここまで読んでくれて有難う
勝呂達磨
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