the others

□応えて
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関ヶ原の戦いから二年余り。
西軍の彼女を城に置くことに賛成したのは、提案者であるわし一人だった。
忠勝でさえ、反対した。
何の処罰もなく、それも敵の忍だった者を城内に置くのだから無理もないのだろう。

彼女は、わしがまだ豊臣傘下だった頃の仲間。
その頃から、わしは彼女を慕っていた。
彼女がわしをどう思っていたのかは、知らないが。
秀吉殿を討った後の彼女はわしの知る限りでは、三成以上に憔悴しきっていた。
残った石田軍の中でも群を抜いてわしへの恨みで蝕まれていたのではないだろうか。

一人の将軍の裏切りでいとも簡単に崩れた西軍や、守ると決めた仲間たちの死によって、今の彼女には皆が心配するほどもの、力も、気力も、何一つ残ってはいない。

あれほどの傷を負わせてしまったのは、他でもないわしであって、傷を癒すことはできなくても、その手助けだけでもしたい。


せめてもの償いだ。
いや、ただの自己満足かもしれない。
とても愚かなことだと分かっている。
それでも彼女の手を離せないのは、今でもわしが彼女を慕っている何よりの証拠であり、この期に及んで自身の気持ちに応えて欲しいとどこかで思っているからなのだろう。



「お前が、今でも……愛しい」

手を握れば、髪を撫でれば、ふわりと笑う彼女がとても愛しい。


『…いえ、やすさま』

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