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さすがに11月にもなると朝晩の冷え込みはより一層増す。
布団の温もりに加えて、人の暖かさがあれば誰だってこの冷たい空気の中に身を投じようなんて思わない。
昨晩、やっとの思いで再会できたシリウスの頭越しにボーっと窓を叩く激しい雨を見ながら考える。
後ろから押されて、床にぶつけた額がまだジンジンと痛む。
「ん、おはよう名前」
「…おはよ、シリウス」
ごそごそと動いたせいかシリウスの目がゆるく開いて、ほほ笑んだ。
ああ、やっぱり好きだな
なんて、一人甘い世界に酔いしれたのもつかの間、昨日の自分の発言を一語一句鮮明に思い出してしまった。
普段の自分ではありえないような言葉をスラスラと言っていたことが恥ずかしくて、布団に潜り込むとクスクスと笑いながら頭を緩く撫でられた。
「…シリウスにこんな事されたことないから、変な感じがする」
「え、待って!? 今何時!?」
また、ゆっくりと顔を近づけてきたシリウスの顔をグッと押さえつけ、起き上がって時計を見た。
まだ朝の早い時間だと思い込んでいただけで、とっくにお昼の時間を過ぎている。
ウグッと呻く声が聞こえたけど、気になどせずにベッドから飛び降り、制服を用意する。
「…どこ行くんだ?」
年齢に相応しくない、ブスっと拗ねた顔でこちらを見やるシリウス。
「どこって、授業だよ。早くしないと、スネイプ大先生の授業が…」
「スネイプって、あのスニベリーのことか!?」
「そうだよ、私が愛してやまないスニベリー!」
授業まではあと30分ほどの時間がある。
それまでには、隣の厨房でシリウスのお昼ご飯を用意してもらわないと。
本来なら次の授業は闇の魔術に対する防衛術の授業だけど、もうすぐ満月の為にリーマスは授業を行えるような体調ではない。
だから、代わりとしてスネイプが教鞭をとる。
あまり行きたいとは思わないけど、そろそろ出席が足りずに単位がもらえないという事態が起きかねない程に追い込まれてきている。
嫌でも行かなくてはいけないのだ。
教室までは少し距離はあるものの、恐らく遅刻はしないだろう。スネイプに睨まれることもなさそうだ。
ただ、昨日の夜からいなかったんだから、ドラコやパンジーにはひどく質問責めにあわされそうだけど。
二人の質問責めは長い。とにかく根掘り葉掘り聞きたがる。
何をどこまで聞かれるのか想像し、苦笑いしながら最近やっと自分でも調合できるようになった縮み薬を飲み干すとみるみるうちに、身体は小さく、顔は幼くなっていく。
「名前…」
「なあに?」
「授業なら私が教えるから、ここにいてくれないか…?」
また何をバカなこと言い出すんだと、呆れ顔で振り返れば、シリウスは真剣な顔でこちらを見ていた。
そうだね、と流されそうになるのをグッと堪えて、ダメと一言だけ言ってから昼食も受け取りに厨房へ行くため、部屋を出た。●●