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城の隅、部屋の前まで来たところで
背中にすごい衝撃を受けそのまま前の目に転げてしまった。
『いった〜…っ』
おでこを思いっきり、石畳の床に打ち付けたからゴツンとすごく鈍い音がした。
これ、大丈夫?切れていない…?
真っ先に額を触って確認した。
「本物、か…?」
背中に馬乗りになる声に、クスっと笑ってしまった。
さっきまでのあの鋭い目や雰囲気ではなくて、とても弱弱しかったから。
スルッと身体を反転させ、上を向くと、あの頃とは違って、大人になった、それでも面影の残る、私が大好きなシリウスが居た。
「本物だよ」
へへっと笑うと、突然抱きしめられた。
「え、ちょっと!」
「やっと、やっとだ…やっと会えたんだ。本当にここにいる…名前…名前…!」
何度も私の名前を呼ぶシリウスの声は少し震えていて、肩も少し震えていた。
「ごめんね、ずっと会いにこれなくて…シリウス…」
応えるように、シリウスの名前を呼ぶとより一層、強く抱きしめられた。
そっと背中に腕を回した。