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宴が始まったのか、遠くの方ガヤガヤと盛り上がる声が聞こえる。
貰いすぎたお土産で部屋が大変なことになったため、片付けてから向かうよと言うと、パンジーもさすがにこの状態は申し訳ないと思ったのか、手伝うと言ってくれたものの、パンジーのお腹の虫が限界だと訴えかけてきたので、先に行っていいよと言うと、ごめんねと言いながら、大広間へと向かっていった。
よかった、正直このままここに居たら計画も何も、全てが水の泡になるところだった。
元の姿に戻って、ローブを羽織り貰った食べ物達を自室へと鍵を使って運んで、自室の方の扉からそっと部屋を抜け出した。
グリフィーンドールの寮って確か、こっちだった、よね?
「うえ…こんなに階段上るなんて…グリフィンドールじゃなくてよかったかも…」
目的地に近づいてきたので、目深に被ったフードをより一層深く被りなおして、グリフィンドール寮の扉絵の近くへ行くと、そこには案の定、今にも癇癪を起しそうなやせ細った黒い犬が一匹。
「おーい、ワンちゃん。怒ってもいい事なんかないよ」
今にも太ったレディにその長く伸びきった爪をたて、引き裂こうとする寸前に、声を掛けると、ジロっと犬はこちらにその鋭い目を向けた。
「こっちだよ、シリウスおいで」
涙声になっていなかった心配だった、涙をこらえきれなかったから。
犬の姿だとしても、そこにいるのは、私が、私がずっと待ち望んだ、シリウスその人なんだから。
一瞬、目が見開かれるのを見た。
走り寄ってくるのを確認して、一目散に、自室へと走った。
走ってくるのを受け止めて、いますぐに抱きしめたい。
ごめんねって謝りたい。
大きくなったねって、頭を撫でてあげたい。
沢山の事を飲み込んでひたすらに走った。
フードが脱げるのも気にせず。