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「大変だぞ名前ちゃん!」
ホー介専用のお皿にご飯を盛り付けて、まだかまだかと目を輝かせるホー介に待てをいいつけているときだった。
トムさんが慌ててカウンターから飛び出してきた。
途中急ぎすぎて、足を椅子にぶつけていた。
「どうしたんですか」
『いた!』
目を離した途端、早く食べさせろと言わんばかりに手を突かれた。
「ごめん、はいいいよ」
「し、新聞!」
差し出された新聞には、1面に大きく載せられたシリウスの顔写真とシリウス・ブラック脱獄の文字。
何も言わず、トムさんを見上げると、トムさんは青い顔をしていた。
「だ、大丈夫ですよきっと!」
掛ける言葉も思いつかなくて当たり障りのない言葉しか言えなかった。
「私たちが怖がってお店を開かなかったら、余計に辛気臭くなちゃっいます…」
ね
と軽く笑うと、そうだねとトムさんも軽く笑っていた。
そりゃ、犯罪者が脱獄なんて聞いたら、居ても立っても居られないのが普通だ。
とにかくシリウスが不憫に思えた。