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□掌中の珠
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いつからか、こんなにも人を愛するようになった。

こんなにも、大切だと思えるようになった。




夕食後、名前はいつも通り、私室に顔を出した。


暫くソファに腰掛けながら紅茶を飲み話していたが
連日テスト漬けで徹夜ばかりだった生活がたたったのか、我輩の胸にもたれ掛かって寝てしまった。


寝顔の名前は、今まで何度も見てきた。
しかし、自分の腕の中で安心しきった表情で眠る彼女の顔は何度見ても愛おしい。


腕の中で眠る名前の額にキスを落とす。

「んん…教授?」

ぼんやりと開いた目で、我輩の胸元から見上げてくる。

「名前」

彼女の耳元の髪を掬う。

「ふふっ 教授の髪、さらさらですよね」

僕の髪に触れる名前の手を捕まえて、我輩から離れるなと願いを込めて掌にキスをする。


「くすぐったい」

微笑む彼女の首筋にも同じように。

「どうしたんですか…?今日キスばっかり」

普段、滅多にキスをしたりはしない。
ただ我輩のいれる紅茶を飲み、話すだけで終わっている。


「そういう気分なのだ」

変なのと笑う名前はとても可愛らしい。




我輩の胸元に顔を埋めた名前が上を向いた途端に、またキスの雨を降らせる。
額から瞼、鼻先、頬、耳。

唇へのキスはより一層深く。

酸素を求めて開いた口に舌を割り込ませる。

「ふ…っんう!」

端から漏れる甘い声と水音が聴覚を刺激する。



唇を離すと両の口の間に細い糸がかかる。

少し涙を浮かべた顔が視界いっぱいに広がった。


「名前、愛してる」

「ん、私も…セブルス」


掌中の珠。
これから先も永遠に君を手放すことはない。
ここに永遠の愛を誓おう。

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