HPd
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シリウスの風邪はそこまで質の悪いものではなかった。
熱は翌朝には平熱にまで下がっていたけど、頭痛や咳、身体のダルさがひくには少し時間がかかっているようで。
「名前ー」
「んー?」
またどうせ暇だと言うに違いない。
「暇!」
ほら。
「何言ってんの、まだ完全に治ったわけじゃないんだし、おとなしく寝ててよ」
「だーかーらー!もう元気だっ、うわ」
勢いよく立ちあがって、ふらふらして転びかける。
この光景はもう朝から何回も見させられている。
「テレビ見るなり何なりしてくれて良いから、せめて寝ててよ…」
まったく動じない私についにシリウスも諦めたようで
ぶすっと頬を膨らませながら布団に潜り込み、開けっぱなしの襖の向こうから
恨めし気な目で私を見る。
あ、やばい。可愛い。
何も言わずに写メだけ撮ってまた読みかけの小説に手を伸ばした。
まああれだけ元気だし、さすがに明日には体調も万全になってるでしょ。
時折小説から顔をあげて視線の主を見ると、慌てて布団に潜り込んだり、寝がえりをうったり…
何だそれ…
その度に小さく笑った。