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バイトから帰ってくると
部屋に明かりは灯っておらず
夕焼けが部屋中を真っ赤に染めていた。
「シリウス?」
声をかけると、和室の方から返事をするように
服の擦れる音がした
シンクに運ばれた食器には
ある程度口をつけた朝食と昼食。
ほとんどが残されていたけど。
電気をつけ、布団に入ったシリウスのもとに寄ると
眠ってはいるものの
その呼吸は荒く、顔を赤くしていた。
「昨日の、海のせいかな…」
額に手を当てれば、酷く熱い
「たいへん…!」
すぐに体温計や、冷却シートを家中からかき集めてきた。
「名前?」
「うん、ごめんね、もっと早く帰ってくるべきだった」
「何言ってるの、帰ってきてくれただけで十分だよ…」
シリウスの汗を拭ってから冷却シートを額に貼った。
布団から伸ばされたシリウスの小さな手が、私の手を掴んだ。
病院にも連れて行ってあげられないのが悔しい。
こんなときに、何もしてあげられないなんて…。