HPd

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海へ遊びに行った翌日、重たい身体に鞭を打ってバイトに来ている。


日焼け止めは塗ったものの、じゃっかんヒリヒリしている。

皮捲れたりしたらどうしよう…。

ああ、そういえば今日は家出るとき、まだシリウスは寝てたな…。

いいなあ、私もベッドで2度寝したい…。

シリウス…、!!

彼の名前を繰り返すと、キスされたことを思い出して
顔に熱が集まってきた。
きっと、今の私にピッタリの擬音語はボン!だと思う。

そんなことばかり考えてもうどれだけの時間
仕事に、みが入ってないだろうか…


ピークの時間は過ぎて、お客さんがまばらにしか入ってないのが
せめてもの救いだろう。




さすがに昨日は遠出しすぎた。しかも、バイクでなんて、ちょっと調子乗った。


『名前ちゃん』

『はい!』

後ろから店長に声をかけられて
集中できてないのがバレたのかと、肩をビクつかせてしまった。

『この間、旅行に行くって言ってたけど行き先とか決まっちゃった?』

『え?いや、まだですよ。ただ、星の綺麗なところに行こうかな、と思ってます。』

『ほんと!?それなら、俺ココで民宿もやってるんだよ!
あ、つっても経営は知り合い夫婦に任せてんだけどね』

そう言ってジーンズのポケットに丸めて突き刺していた、旅行雑誌を引きぬいて付箋の貼られたページを開いき、見せられたのは1つの日本家屋。


『えっと、ココに泊らせていただいてもいいんですか?』

『うん、もちろん!むしろ泊ってやって!なんか、夏場は観光客が減ってるから、結構オススメだけど
なかなか人入らないらしいんだよ!』

本当にありがたい!これで、夏も観光客が入れば
夏の俺の財布も潤うしね!

と、結局お金の為に動いていた店長に呆れつつも
田舎に民宿まで持ってる店長が少し怖くなった。





『じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます!』

『おう!宿泊の日程とかの連絡は要らないらしい
まあ客が居ないし、いつでも部屋はいくらでも空いてるってこったな!』

ガハハと豪快に笑って、スタッフルームへと消えて行った。


『ああ、言い忘れてた。そこ俺がまだガキん時に住んでたとこでさあ
親に頼んで、天体望遠鏡作ってもらったんだよ
行きたい時は店で聞けばいいよ』

『あ、ありがとうございます!』

思わぬ特典に頭だけ扉から出した店長に頭を下げると
また豪快に笑いながら
もう、3年もいるのに名前ちゃんは硬いね
と言われた。


そうでもないと思うけど…




なんて考えていたのも数分のことで
また、頭の中は最初と変わらないものになってしまった。





今日、家を出たのは10時。
その時にご飯作っておいたからと言っても返事はなかった。

布団から頭だけをだして
こっちを向いてなかった。

ただ、布団が規則正しく上下していた。


シリウスがあんな時間まで寝てるなんて。

いつもは絶対に
私より早くに起きて、私から布団を奪ってまで
7時半には起こしに来てたのに。

調子いいときなんて、ご飯まで用意してくれていた。



どうしちゃったんだろう。

昨日の疲れで寝てるだけならいいけど。



なんだか急に不安になってきた。


今日は夕方までだし、はやく帰ろう。
 

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