HxH

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ここ、どこ?

あまりに突然のことで
元よりお世辞にも賢いとは言えない
私の脳みそがパンクしかけている。


もうすぐ桜も散り始める季節。
有給消化と称して、上司から無理矢理奪取した連休で一人旅に来ている。
この忙しい時期に申し訳ないなあ…という後ろめたさがないと言えば嘘になるが
気になるかと言われれば、そうでもないのが正直なところ。


なぜ、こんな時に一人旅なのかといえば
所謂、傷心旅行。

会社の取引先の営業さん。それが、私の元カレだ。
もう何年の付き合いなのだろう。
長くはないが、簡単に忘れられるほども短くはない。これからだという時の裏切りだった。



ミモザと桜の狂い咲く様も
青く優しい波の音も
大きな全てを忘れさせてくれる圧巻の星空も
どれも私を癒してくれる。
事あるごとに足を運んでいた
とても大切な場所。


ただ、その日は少し違っていた。
また同じように、海に足を運んでいた時だった。
いつもと違う浜辺に出たのか、砂浜との境に草木が生い茂っていた。

「こんなところ、あったんだ」


リゾート地にでも来たかのような景色に惹かれて
草木をかき分けて浜辺へと足を進めた。



最後の蔦を押し除けた時
眼前にはいつもの優しい青が広がっている筈だったのに。

「ここ、どこ」


眼前には、まさかの荒廃した街並みが広がり
そこらかしこで土煙が立ち上っている。
おまけに、もう夏も近いのかと勘違いしてしまうような日差しだった真っ青の空が
今は、霞みがかり虚な重たい雲に覆われている。

後ろを見てもさっきの生い茂っていた草木は跡形もない。


「ひ、久々の女だ…」
「お、女…!!」
「はやく!は、はやく!捕まえろ!」
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