オビト原作沿い中編
□巻ノ九
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『…今日はもう少し、マダラと話がしたいの。……本当は、寂しかったから。だから、』
「……いいだろう、」
『…ありがとう。…それに、新しい世界の為にも過去の事を、誰かに聴いて欲しくて。』
「………」
『……ほら、わたしにはマダラしかいないんだもん』
ねねこはマダラと同じように月を見上げる。
『わたし、やっぱり一人じゃなにも出来ないのよ。…ずっと、事ある毎に慰霊碑に刻まれたオビトくんの名前に向かって問いかけてた。オビトくんならどうしてた?って。いつもいつも。答えてくれるはずもないのに』
「………」
『…あなたが初めて私の前に現れた日も、わたしは自分で何一つ決められなかった。クーデターに賛同しない一方で、何の力も持たない事を理由に逃げてばかりで。オビトくんならどうしてた?って。答えはいつもオビトくんに任せっきり』
「………」
『そんな時あなたは私の前に現れた。……そしてマダラはわたしに新しい夢をくれた。人と人が殺し合うことに疑念を抱いたわたしに…、争いの無い世界を望んだわたしに、平和だけの…愛だけの…わたしの望んだ世界を創るという希望を』
「………、」
『…わたしはオビトくんが生きていてくれたら、それでよかったの。オビトくんと一緒に二人の夢を叶えたかった。』
淡々と語るが深い気持ちの込められたねねこの言葉を
マダラは静かに、ただ静かに聞いた。
『…そういえば、わたし、実はすごく人見知りだったの』
「…だった?」
『…いや、現在進行形かも。』
「だろうな、暁のメンバーに会った時もそうだった。」
『…でも、今思えばわたし、マダラには人見知りしなかった』
「………」
『…どうしてだろう?』
「…フン、嘘だな。あの夜、お前は俺に刃を向けた」
『…それはあなたが怪しいから』
「………」
『怪しい仮面をつけて、急に現れて、生きているはずのない時代のうちはマダラを名乗って……変質者だと思ったの』
「…ねねこ、」
マダラは少しばかり怒りを含ませて
ねねこの名を呼ぶ。
『…だけど、再びマダラが私の前に現れてからも、人見知りしてない』
「…随分昔の事で忘れたな」
『…うちはマダラにとっては、極々最近のことじゃないの』
「………」
マダラは立ち上がり一人歩き出す。
ねねこもそれに続いて立ち上がれば
マダラが歩みを止めた。
『?』
「…ねねこ、明日は雨隠れに行く」
『…任務?だけど、トビは死んだんでしょう?』
「………受け取れ」
『……?』
マダラは勢いよくねねこにあるものを投げて寄越す。
『!』
「…お前にくれてやる」
『う、うそ…本当に!?』
マダラがねねこに渡したのは
青の字が記された指輪だった。
ねねこはマダラに駆け寄り後ろから
その大きな背中に抱き着いた。
『マダラ!!ありがとう!!』
「歩きにくい、引っ付くな!」
『嫌ならすり抜ければいいでしょ!』