オビト原作沿い中編

□巻ノ五
2ページ/4ページ





『っ、…夢……、か…』










じんわりと滲んだ嫌な汗に目が覚めた。
どうもここ最近は夢見が良くない。
きっと慣れない環境での生活に
体も心も着いていかないだけだ、
そう思うことにした。











何か大切なことを忘れている気がする。
そう思うのは今に始まったことではない。
オビトくんのことは今でも、全て覚えている。


わたしを呼ぶ頼もしい声に、
ツンツンとした癖のある髪の毛、
いつでも勇気をくれる笑顔に、
仲間想いで人を助ける優しい心、
リンさんを思う不器用な一途さ、
嫌なことも吹き飛ばす豪快さ、
わたしに夢をくれる広大な思考、
わたしを撫でる優しい手、



オビトくんの事は
どれだけの月日が経とうと
鮮明に思い出せるというのに。







『…父さん、母さん』








両親の事はあまり記憶にない。
殉職した時、私はそれ程までに
幼かったわけじゃない。
なのに何故?と何度も思った。
考えれば考える程
記憶は、遠ざかっていくような気がして。
忘れちゃいけないのに、
忘れられるわけがないのに、
まるで記憶に鍵をかけられたように。







両親が殉職してから
私はオビトくんに出会い、夢を見て、
忍を目指しアカデミーに通った。
そして忍となり、
オビトくんを失い、
里に、一族に、尽くしてきた。








人との関りが無かったわけじゃない。
特に一族の人間とは
他人より多く関りを持っていた方だと思う。




だけどどうしてなのか、
他人から両親の話を振られることは
皆無であった。



しかしそれは、わたしにとって都合がよかった。
何故なら、両親が居ないことは
わたしにとって寂しさでしかない。
任務に差し支えてしまう。
寂しさを感じるのはオビトくんだけで
十分すぎる程だったのだ。







わたしは一体何を忘れているのだろう
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ