オビト原作沿い中編

□巻ノ十四
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※この先裏描写を含みます。
苦手な方は次話よりお楽しみくださいませ。




















「……引き返せると思うなよ」





そう言ったマダラに組み敷かれ、
熱を帯びたその赤い瞳に見つめられれば
背中からぞくぞくとしたものを感じた。
これは背徳か歓喜か。
はたまた先に起こるであろう行為へ対する
恥じらいか不安なのか。

マダラは優しく私の頭から頬を撫で、
その指はやさしく首筋を伝った。
常時黒い手袋を嵌めたその指先から与えられるくすぐったさには
一切のぬくもりや人間味を感じないが、
わたしの鼓動が高まっているのは確かだった。
優しいその指が下へ進んで行くにつれ
何とも言えない不安が私の胸を支配する。
くすぐったさに身を捩り、甘い吐息を漏らせば
マダラは笑みを含んだ弓なりの眼を光らせ
わたしを見下ろすのだ。
まるで今が永遠かのようにゆるりと
マダラは指を這わせていく。
これもマダラの思惑か、
焦燥感と先の行為に対する不安と
反して、もっとマダラを感じたいという葛藤に
私のすべてを支配するマダラに手を伸ばせば
グイと掴まれた手首。身動きすら許されない。
全てはマダラに支配されている。



『マダラ、』

「引き返せないと思えと言ったはずだが」

『違う、』

「?」

『もっと、あなたを感じたいの』



掴まれていない方の手でマダラの仮面をなぞる。
例え顔を見ることが叶わなくとも
今だけはマダラをもっと感じたい。



『目を閉じているから、お願い』



一瞬考えるようにマダラの動きが止まる。
そうかと思えば自らの懐を漁り一本の腰紐を取り出し
手際よくわたしの目を隠すように頭の後ろで縛った。
急に奪われた視界に目の前が真っ暗になる。
些かの不安を感じて、再びマダラに手を伸ばせば
今度は手首ではなく、手のひらを掬われる。


「怖がるな」


いつになくマダラの声色は優しかった。
それと比例するようにマダラの手袋を嵌めた指が
わたしの指に絡められる。
貝のようにきつく結ばれた手の甲に
柔らかな唇のぬくもりを感じた。
怖がるなと、指を絡めて、
マダラの優しさを垣間見た気がする。
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