オビト原作沿い中編

□巻ノ十三
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次に目を開けた時には、
もうそこにはオビトくんは居なかった。


最後に握った手のぬくもりがゆっくりと消えていく。
名残を惜しむように自らの手を握りしめ
わたしはそれがただの夢ではなかったことを実感した。



『…オビトくん、』


辺りを見回してみればそこは
マダラと語り合っていたアジトの一角で、
見上げる月の位置は飛ばされる前と然程変わらず
どうやら時間はそれ程経っていないようだ。



「術が解けるのが早かったな」



声のする方に目をやれば
片膝を立てて座るマダラが居た。
その手の中には罅割れた水晶玉があった。
マダラはこちらを見ずにそう呟いた。



『…やっぱり、マダラの術だったのね』

「これは限定月読。まあ、無限月読のテストのようなものだ」

『…限定月読、』

「…お前の見ていた夢は、お前の望んだ世界だ。」

『………わたしは、』

「…いい夢を見られただろう?」

『………』



確かに、それは素敵な世界だった。
ある一点を除いては…




「だが…こうも早く術を解いてこちらに戻ってくるとは思わなかった」

『……それは、』

「…まさか、俺がかけた術を見破り、全く同じ方法で逆戻りするとはな。」

『…違うの、マダラ。』

「…成長したな、ねねこ」

『聞いて、マダラ、』

「………」

『ミナト先生が言ってた。同じ世界に、同じ人間は一人しか存在できないんだ、って』

「お前というイレギュラーな存在の所為であの世界のねねこが消滅してしまうから。……そんなことの為に、お前はわざわざ戻ってきたというのか」

『……違う、それだけじゃないの、』

「…お前がそれ程の馬鹿だとは思わなかったが」

『…あの世界が本物か否かは然程重要じゃない。確かにわたしはいい夢を見られた。でも、』

「…なら、よかったではないか」



マダラは珍しく話を聞き終える前に、
自ら会話に終止符を打つように
私に背を向け歩みを進めた。
まるでわたしから逃げるように。


『待って、マダラ』

「…今日はもう遅い、お前も疲れただろう」

『わたしは大丈夫だから、お願いマダラ、行かないで』



わたしはマダラの背を追い
風に靡いたその服の裾を掴みマダラを引き留める。




『…ひとりにしないで、』






私の声は静かな夜に孤独に響いた。
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