オビト原作沿い中編

□巻ノ九
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『…!』

「………戻った」



夜空に浮かぶ大きな月を眺めて居れば
急に現れた気配に振り返る。
そこには今では見慣れたオレンジの仮面の男。



『…遅い』

「…仕方あるまい、デイダラに着いていっただけだ」

『…寂しかった、』

「………」

『って、言ったらどうするの』

「さぁ…、な」



マダラの素気無い返事にねねこは不服だった。




『…それで、どっちに行ったの』

「うちはサスケだ。デイダラは死んだ」

『……そう、』

「…トビも、死んだとしている」

『…あなたが死ぬわけないのに』

「俺じゃない。トビだ」

『……そう、』

「………」






マダラの方を向かず月を眺めながら話していたねねこ。
その頭にマダラはポンと手を置いた。






「本当は寂しかったのだろう」

『…ばかじゃないの』

「…月を見て居れば、気が紛れる。」

『そうね、なんだか不思議な気持ち』

「……それで、どうだ?新しい世界について想いを巡らせて待ってたんだったな」

『…新しい世界の事を考えても、頭に浮かんでくるのは過去の事ばっかりよ』




ねねこは頭を撫でられたまま俯く。
マダラはその隣に腰掛けて月を見上げた。





『わたしね、ずっとオビトくんが好きだったの』

「………」

『…初めてそう告げた時は、まだ私も幼くて。好きという二つの感情の違いもハッキリしてなかったと思う。それをわかっていたオビトくんはわたしの気持ちを間に受けてはくれなかったの』

「…そうか、」

『…最初はね、泣いてばかりのわたしを救ってくれた、オビトくんはわたしのヒーローだったの。それがいつしか兄のように慕うようになり家族のように大切な人になった。そして、恋心でもあったんだと思う』





ぽつりぽつりと零れるねねこの言葉を
マダラは月を眺めたまま、聞いていた。






『今ならわかる。幼い日の憧れや恋慕は確かに愛だった。オビトくんは死んでしまったけど、わたしは生き続けて、時が流れ、大人になった。いつまでもオビトくんの時間はあの日から止まったままだけど、わたしは…今でもちゃんと好きだって』

「……ねねこ、…」

『オビトくんと一緒に戦って、火影になったオビトくんと一緒に世界を救いたい。それが私の夢だった。それを成就させる為にも、わたしはオビトくんが居なくちゃダメだった』

「………」

『わたしに振り向いてくれなかったオビトくんに、いつまでも待ってるよ、なんて言っておきながらね、いつまでもわたしは…オビトくんの背中を追い続けるしか出来ない。』

「………、」

『…ホント、ばかみたい…。いつもバカバカ言ってたけど本当にバカなのは私の方ね。』






ねねこは一筋の涙を流す。
月の光を浴びて輝いたそれはとても美しく、
マダラは思わずそれが伝う頬に手を伸ばした。




「………ねねこ、」

『…マダラ?』

「………」

『………』





沈黙が二人を包んだ。
静かな夜に浮かぶのは大きな月だけ。
涙で潤んだねねこの瞳にマダラの赤い瞳が映る。





『マダラ?どうしたの?』

「………いいや、何でもない。」

『そう?』

「…泣くな、ねねこ。もうすぐお前の望む世界は成就する。」





沈黙を破ったのはねねこの方だった。
その声に冷静を取り戻した俺は
ねねこの頬に添えていた手を離し再び月を見上げた。







「(…なにを考えている、俺はうちはマダラだ)」
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