オビト原作沿い中編

□巻ノ三
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いつになく静まり返る夜の木の葉の里は、
今宵起こる惨事を知ってか知らずか。
縁側から覗く月光に目をやれば
美しく無情に私を照らす満月。
もう間も無くここは血の海と化す。














『…オビトくんと一緒に世界を救う、それがわたしの…』













ひとり、オビトくんの写真に語り掛ける。
例えあなたと共に戦えなくても、
オビトくんの夢は私の夢だった。











あの仮面の男、うちはマダラとの接触から数日。
あの話が本当であるならば、
今夜うちは一族は滅亡する。









私はマダラとの接触を火影様には愚か
うちはの族長にすら言わなかった。
否、言えなかった。
あの話を語るにはリスクが多すぎる。
うちは側にそれを流せば十中八九時を早め
すぐにでもクーデターが起きていたであろう。
うちは程の忍が内戦を引き起こせば
木の葉隠れは愚か火の国も大きく揺らぐ。
それを機に他国は必ず攻め込んで来て、
忍界対戦すら再び引き起こしかねない。
それでは世界を救うことなど、












『オビトくんなら、どうしてた…かな、』











そう思うや否や、何処からか
噎せ返る程の血の匂いが流れ込む。
ああ、始まったのか。
自分の思考が意外にも
冷静であることに酷く胸が痛んだ。










しかし何処からも殺意など感じなくて。
蠢く微かな気配は恐らく、
かつて任務を共にしたイタチくん。
幼いながらに忍の才に愛され異例の強さと
今にも壊れそうな優しさを持ち合わせた子。
イタチくんはきっと…
スパンッと大きな音を立てて
勢いよく襖が開いた。
そこに立っていたのは返り血で染まった

『イタチくん…、』

「ねねこさん、…すみません、俺、」

『………、』


イタチくんが血の滴る刀を天高く翳した。
ああ、仮面の男は噓つきだ。
私の元へ来るなど、そんな戯れを…











「待て」

『!』

「何の真似だ」

「イタチ、こいつは俺のだ。お前は次へ行け」

『マ、マダラ…、』

「…!ねねこさん、あなたは知って…」

『………』












イタチは少しだけ目を見開いて私を見た。
原則ポーカーフェイスの彼にしては
それなりの驚きだったのだろう。
そしてもう一度マダラに視線を移すと、
瞬身で私たちの前から姿を消した。












『…来ないと、思いました』

「俺はお前を欺いたりなどしない」

『………』

「…どうだ、少しは…怖かったか?」

『……別に、わたし一人居ないところで世界は何も変わらない。』

「…違うな。俺はお前を求めた」

『…でも…もう、大切な人は居ないし、夢だって……』

「ねねこ、もう一度だけ問う。俺と共に来い」










マダラは座り込む私に手を伸ばす。
見上げれば眩しい程の月光に
マダラの黒い影と赤い眼が神々しく映った。










「俺と共に世界を創り直そう。」

『…わたしは、』

「お前の望む世界だ。死んだ人だって、生きていることにできる。」

『…オビトくん、』

「………」

『もう一度、あなたに会いたい…』











わたしはもう迷うことなく、
マダラの手を取った。
そうすればマダラは、
私の両手首を強く握り直し引き寄せて
紅い瞳で私の黒い瞳を覗き込むように見つめる。















「いい子だ、ねねこ。」

『…マダラ、』

「お前の居場所はこの俺だ」















そして、わたしは
マダラのその赤い瞳に酔いしれ
吸い込まれた。
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