Imitation

□閑話@―疑問
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「じゃあさじゃあさ、みんなが所属してるBloody Crossってどんな組織なんだ?オイラが洞窟に住む前まで、そんな組織無かったゼ?」


ビットの疑問はまだまだ尽きる事はない。

が、フィンを除いた4人は複雑な顔をする。



「簡単に言えば……『何でも屋』かな?」


答えたのはティアで。


「何でも屋?」


「世界中から舞い込む色んな依頼を私達が解決する。そして、依頼に見合った報酬を支払ってもらう。
どの国にも属さず、中立の立場でね。」


どこかやりきれないように言う。ビットはそれに気付かないほど鈍感ではない。

堪らなくなって、リルが口を挟む。



「そう言えば聞こえは良いわ。でも実際は、戦争、侵略の加勢。暗殺の依頼だって少なくないの。
……だからあたし達は『血塗れの十字架』。」




不意にフォルテが立ち上がって、ビットの元へ行く。
ひょいと小さなビットを掴み上げた。



「俺らの事ばっか聞いて、自分の事話さないのってずるくないか?」


そのままビットの頬をみょーんと左右に引っ張った。見事に出来た変顔に、フィンが思わず吹き出した。



「ビットって一体何食べるんだ?あれか、やっぱり人参?」


「ふっ……!」


今度はジスも吹き出した。
よく見ると、ティアも顔を背けて微かに震えている。



(人参とか似合い過ぎる……!)



「オイラうさぎじゃねーよ!」



「ねぇねぇ、やっぱりビットも寂しいと死んじゃうの?」


リルは笑いを隠そうともせず、ビットをからかい始めた。


「オイラうさぎじゃないから死なないもんっ!」


「でもあの洞窟で会ったって時、しっかりフィンちゃんに抱き締めて貰ってなかったか?」


「もし私達が洞窟に行かなかったら、ほんとに孤独死してたりしてね。」


ジスとティアまでからかい始める。



「良いんだぜビット、お前『うさぎ』だもんなー。」


「そうよ、『うさぎ』なんだもの普通よねー。」


フォルテとリルはニヤニヤしながらビットに詰め寄る。耳やら尻尾やら撫でてると、だんだんビットの目が潤み始めた。



「う、うわあぁあぁぁあん!フィンーっっ!」



フォルテの手から抜け出して、フィンに飛び付いたビット。
だが……。



「フィ、フィン……。」


フィンの瞳には涙がたまっていて、顔は若干引きつっている。


「あ、いや、ね?笑ってないよ、別にビットのこと『うさぎさんみたい』なんて思ってないよ。『人参食べる姿面白そう』なんて思ってないからね、本当だよ。」


むしろ本音駄々漏れである。その顔で言われても説得力の欠片もない。


「フィンまで……!うわあぁあぁぁあん!」



フィンの一言がとどめになったのか。
部屋の隅でいじけてしまった。

さすがにマズイと感じた4人は、慰めにかかるが時既に遅し。


ビットの機嫌を直すのに朝方まで掛かったそうで。

村を出発したのが早朝した理由がこれだったりするらしいのは、秘密のお話。



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