Imitation
□V 鬼神の真実
4ページ/9ページ
野宿をした3人は北の洞窟へ向かっていた。
昨日同様、道中はなるべく気配を殺して魔物との戦闘を避けた。回避仕切れない場合が何度かあったものの、大した傷も負う事無く、陽が真上に来る頃には洞窟に辿り着いていた。
「うわぁ……。」
「流石に雰囲気あるね……。」
「あ、でも中はそんなに複雑な造りじゃないですよ。」
洞窟の周囲は雑草一本生えておらず、乾いた大地が剥き出しになっている。唯一あるのが枯れ木数本で、これがまた怪しい雰囲気を醸し出している。
「フィン、鬼神の居場所まで案内出来る?」
この言葉には、その覚悟を問う意味も含まれている。
フィンは迷う事なく頷いた。
「はい。1年前と同じなら、入口から続く1本道をしばらく歩いた所に居るはずなんです。
……でも、」
ティアの問いにフィンは躊躇いなく答えたものの、最後の言葉に戸惑いが感じられる。
「『でも』、何?」
「……何でもないです。」
「……じゃあ、中に進もう。」
ティアは、敢えて言葉の続きを聞こうとはしなかった。
そして3人は真っ暗な洞窟に足を踏み入れる。足下は岩だらけで苔むしている。視界と足場の悪さも相俟って、慎重に進まざるを得ない。
しばらく黙々と歩いていたが、思い出したようにジスが口を開く。
「そういえば、フィンちゃんはどうやってこの洞窟から逃げ出したの?」
「あ、やっぱり長老様から聞いたんですね。」
「あっ、……ごめん。過去の事勝手に知られて、気分良いわけないよね……。」
「いいんです。皆さんの言葉のおかげで、わたし、逃げない勇気を貰いました。
だから、もう大丈夫です。」
暗がりで良く見えないけれど、フィンの表情は晴れやかに違いない。
そしてフィンは言葉を続ける。
「実は自力で逃げた訳じゃなくて、逃して貰ったんです。」
「え?それってどういう……、」
ジスが聞き返そうとした刹那、地の底から呻くような声が響いた。