Imitation

□T 戦闘専門中立機関『Bloody Cross〜血塗れの十字架』
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星読の間とは、読んで字の如く星を読むための広間である。そのため天井は全てガラス張りになっており、今も、瞬く星達が見える。

カインはこの場所が好きだった。もちろん、指揮官という仕事で星で未来を占うことはよくあった。
けれど、何よりここは初めて銀の少女と、ティアと出会った場所だったから。

彼女と自分の、始まりの場所だから。



そうしてカインは一足早く、星読の間でこれから任務に旅立つ仲間を待っていた。



「……おや?早いですね、ティア。支度はもう済んだのですか?」



扉の開く音がして、すぐに目を向けるとティアがいた。

ティアは少し浮かない顔で。



「……カイン、フィンとフォレストプリズン、何か関係があるの?」




「どうして?」




「カインがフォレストプリズンの名を出したとき、フィンの顔つきが変わったの。貴方も気づいていたでしょ?」



今は、自分とティア2人きり。つい敬語が外れてしまう。



「ティア、君がそれを聞いてどうするんだい?それに、Bloody Crossに入団する前やその経緯を聞くのは御法度だろう。」




「……わかった。」




ティアとカインの所属する『戦闘専門中立機関―Bloody Cross』通称・血塗れの十字架では、他人に言えないような事情を抱えるような団員が多く、それ故過去や入団理由を聞くのは暗に禁止されているのだ。




「行けば分かるよ、必ず。」




少しばかり気を落としたティアに、カインは一言だけ言った。しかしティアはそれに反応せず、黙々と床に魔法陣を描いていた。



魔法は紋章魔法(クレスト)と詠唱魔法(アリア)に大別される。
紋章魔法のほうが威力が大きいのだが、発動までに時間がかかるため戦闘には向いていない。
反対に詠唱魔法のほうは、呪文さえ唱えれば発動できるため発動時間はあまりかからないが、威力はどうしても紋章魔法より劣ってしまう。しかし、戦闘で最も使われる魔法である。


そしてティアは、この血塗れの十字架で一番強い魔導師。呪文を唱えなくても詠唱魔法を発動することが可能である。


今回彼女が使うのは、紋章魔法と詠唱魔法を合わせた複合魔法でかなりハイレベルなものだ。




カインとティアの間には重い沈黙が流れていた。未だティアは魔法陣を描いていて、カインは壁に背を預けティアをじっと優しい眼差しで見ている。

そしてティアが魔法陣を描き上げたとき、再び重い星読の間の扉が開かれた。







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