Imitation
□T 戦闘専門中立機関『Bloody Cross〜血塗れの十字架』
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――カツ、カツ、カツ
暗い廊下に足音が響く。
窓から届く微かな月明りを便りに、1人の少女が腰の辺りまである銀の髪を靡かせながら1つの部屋に向かっていた。
そして、最上階にただ一つ存在するその部屋にたどり着く。
ばたん、と少々乱暴に扉を開けた所に、少女の機嫌が伺えた。
「ついさっき任務から帰ったばかりなのに、もう次の任務?少しくらい休ませてよ……。」
入るや否や、少女は少し疲れた風に、部屋の主に文句を言う。
「すみません、緊急要請でしたので。そう気を悪くなさらないで下さい、ティア。」
と、部屋の主であるこの青年――カインは至って冷静に切り返した。
銀髪の少女――ティアは1つ溜息を零すと、仕方ないか、と言った風にソファに腰掛けた。改めて部屋を見回すと、自分の他に4人の人物がいることに気が付く。
――ツインテールの踊り子
――灰色の剣士
――緑の幼い少女
――茶髪のガンナー
「こんな真夜中に集まって頂いたのは、もちろん任務のためです。急を要するため、陽が上る頃には出発してもらいます。」
カインは一度眼鏡を押し上げると、纏う雰囲気が変わり、部屋の雰囲気もガラリと変わった。
「今回の任務は、そんなに大変なの?」
ティアが思わず口を挟んだ。
本来任務は2人一組、または3人一組でこなすのが普通である。しかしこの場に集められたのはティアを含め5人。これは明らかに“異常”だった。
「ええ。森の国トリシアの皇帝より緊急依頼が入りました。
フォレストプリズンで魔物が大量発生し、その中の村が襲われているそうです。皆さんは、魔物の殲滅と大量発生した原因を究明して下さい。」
カインの指示に4人は力強く頷くも、緑の少女――フィンだけはどこか物憂げな表情をしていた。
カインはそれに気付いていたが、敢えて彼女をこの任務に就かせたのだ。いかなる事情も、年齢も関係ない。この緑の少女がどんなに幼くとも、この戦闘専門中立機関に属する限り、1人の戦士なのだ。
「部隊編成は魔導師長ティアを隊長とし、騎士団からフォルテとジス、魔導団からリルとフィンを隊員とします。
……一刻の猶予もありません。これから1時間後、各自支度を整えて星読(ホシヨミ)の間に集合して下さい。ティアの転移魔法で現地へ行きます。」
カインのその言葉の後、5人は各自、支度を整えるため自室へ戻って行った。
――集結は1時間後