Plan
□恋の形
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「美沙子ちゃん?」
席に着いた瞬間、その声にあたしは一瞬で凍り付いた。
「能登、くん……」
あたしは高校生のときに味わった辛い恋におさらばするため、この合コンに参加した。彼を忘れるには、新しい恋しかないと思ったから。新しい出会いがほしかったのに、また彼に会ってしまった。
――卒業式の日、能登くんに告白しようと思ったけど出来なかった。告白しようと校門で待っていたら、能登くんの隣にはかわいい女の子がいた。
「美沙子ちゃん、元気だった?」
2、3ヶ月会ってないだけなのに、能登くんが大人っぽく見える。
どうやら、忘れよう、忘れようとしていたこの恋心は、未だ胸の奥底で燻っていたようで。
まだ、こんなにもときめいてる私がいる。
「う、うん。元気だったよ。能登くんは?」
「元気だったよ。」
能登くんは以前と変わらない笑顔で笑いかけてくれて、高校時代に戻ったみたいだった。
私、この笑顔が大好きだったんだ。
卒業してもう2、3ヶ月経っているのに。
私のこの想いは、過去形になってくれなくて。
私は、あの卒業式の日に思いを馳せる。
あの日女の子と一緒にいるのを見た私は、一目散に逃げ出した。
でもやっぱり諦めがつかなくて、いつの間にか教室に来ていた私は未練がましくも、能登くんの机の隅に書いたんだ。
言いたくて
言えなかった、
あの2文字を。
「美沙子ちゃん?」
「へっ?」
「どうしたの?呼んでるのに全然返事してくれないから。」
「あっ、ごめんね。何でもないの。」
思い出に浸りすぎてたみたいで、能登くんが呼んでるのに気付かなかった……。
「……あのさ、美沙子ちゃん。」
「は、はいっ。」
能登くんが、何だか真剣な表情でこっちを見る。
改まって、どうしたんだろうか。
「美沙子ちゃんは、その、えっと、」
「?」
「好きな人、とか、いるの…?」
「えっ!?」
予想外の質問に、私はびっくりして言葉に詰まってしまう。
「う、うん。いるよ。」
能登くんは押し黙ってしまい、そこで会話が中断してしまった。