闇夜のセレナーデ
□星屑協奏曲
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「ユーリッシュ見てみい、綺麗やろ?」
そう言って花を愛でる母様は、何よりも美しかった。
父様にはなかなか会えなかったけれど、その分母様がいてくれたから。
「卑しい下賎の子。」
異母兄弟にどれだけ蔑まれても、母様が私の名前を、優しく呼んでくれるから。
――それだけで良かったの
「それだけで、良かったんや……」
膨らんだ土。粗末に立てられた申し訳程度の十字架。
目を閉じて思い出すのは、人形のように白くなって事切れていた母様の姿。
妾であった母様が丁寧に葬られる訳もなく、こうして庭の隅に埋められるという最期になってしまった。
「さようなら、母様。」
纏っていたコートを整えて、必要最低限の荷物が入ったカバンを手に、屋敷を後にする。
母様が亡くなり、後ろ盾もない私は、当然屋敷を追われた。それでも、魔王城という行き先があるだけ幸せなのだろうか。
空を見上げれば、闇夜に星屑達が競うように輝いていた。
「羨ましいなあ、お前達は。あんな近くに仲間がいて……」