闇夜のセレナーデ
□世界を変えたかった
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「今日から働かせて頂きます、リト・ヴェルアと申します。」
女性筆頭召使である壮年の女性に、丁寧に頭を下げる。
ちなみに名乗った“ヴェルア”というのはケイさんの家の名前らしい。
宰相の親戚、と言う事ですぐに潜り込めた。
「そうですか。ヴェルア家ゆかりの方でも、最初は雑用から始めてもらいますからね。」
「はい。」
厳格そうなヒト……第一印象はこう思った。
私の着るメイド服も、この筆頭召使が着るメイド服も、やはりイシスのモノとは大分違う。
そして筆頭召使さんに連れてこられた部屋には、私と年が近いであろう女の子がいた。
「彼女はユーリッシュ。リト、お前はユーリッシュから仕事を教わりなさい。」
去り際「頑張りなさい」と言われ、このヒトが筆頭召使の訳が分かった気がした。
「初めましてリト。ウチはユーリッシュっていうねん。よろしくなー?」
ユーリッシュはまるで関西弁みたいな話し方で、私はかなり驚いた。
そんな私にユーリッシュもすぐに気付いたみたいで、くすくす笑った。
「驚いてしもた?ヴェルア家のお姫様じゃしゃーないわな。」
「そう言う訳じゃ無いんだけど……。」
「ウチもよく驚かれる。この口調のおかげで雑用ばーっかやっとるんや。」
ユーリッシュは茶色い瞳を少し伏せた。良く見ると、耳の形が人間とは微妙に違う。
「……差別?」
ユーリッシュは苦笑いを零した。