闇夜のセレナーデ
□黒猫が誘う扉の先に
2ページ/14ページ
猫ちゃんはとても早くて、私は必死に追いかける。
膝下まであるワンピースの丈が邪魔で、太ももの真ん中辺りで縛って走る。
「猫ちゃん、どうしてにげちゃうの!?」
長い廊下を駆け抜けて、突き当たりの扉を開いたら、右に曲がってまた扉を開ける。
階段を一気に一段飛ばしで降りきったら、静かな廊下とたくさんの部屋。
「どこにいるの……?」
今度はゆっくり歩くけど、足音は辺りに響いている。
一つだけ、半開きの扉がある……。
扉に近付いてそっと覗く。小さくて質素な部屋だったけど、綺麗に手入れされている部屋だった。
「猫ちゃん、いる?」
――カタンッ
まるでリトの声に反応した様に、物音がした。
恐る恐る、部屋の中に入ってクローゼットに近付く。
(この中から、音、したよね。)
猫ちゃんが驚かないように、そっとクローゼットを開けてみる。
「猫ちゃん……?」
「きゃあっ!」
……へ?
「きゃあっ!」って?
ふと、クローゼットの奥を覗いてみたら。
「えっ!」
小さな女の子が膝を抱えて座っていました。
更に驚いた事に、その子にはふさふさした猫耳と尻尾がついていて……。
もしかしてもしかして!
「……あなたが、さっきの猫ちゃん?」
女の子はこくんと頷いた。