闇夜のセレナーデ
□風に舞う花びら
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「ヴェルア宰相!」
真っ先に反応したのは、衛兵の方だった。
「剣を下ろしてもらえますか。」
衛兵は言葉通りに剣を下ろした。
解放されたリトは後ろを振り向く。
「ケイさん!」
やっぱりケイさんだった。声でもしかしたらと思ったけど。
「全く……こんな所まで来てしまわれるなんて。陛下がご心配なされていましたよ。」
「セイが?」
どうしてセイが心配するの?そもそも、私が探険してること何で知ってるの?
「昨日の晩餐の時に魔術をかけられたのでしょう。私は陛下に言われてリト様を迎えに来たのですよ。」
そうなんだ、と納得していると衛兵が「あ、あの」と声をあげる。
「宰相、この女は一体……。」
「失礼にも程があります。分を弁えなさい。」
一瞬にして空気は氷つく。ケイに睨まれた衛兵は竦み立った。
「こちらの方は魔王陛下の花嫁様であらせられる。」
ケイさんの一言に衛兵は慌ててリトに礼をする。
「や、やめて下さいっ。」
リトの思わぬ反応に、ケイも衛兵も目を丸くする。
「私、そんな頭下げてもらう程偉くなんかないですから。
……それに、さっきはごめんなさい。私のせいで、あなたが咎められてしまいました。」
今度はリトが頭を下げる。衛兵はますます驚き、ケイはやれやれといった風だ。
「さ、リト様。戻りましょう。」
ケイに促され、元来た階段へ歩き出す。リトは最後に振り返り、もう一度礼をすると駆け足で戻って行った。