闇夜のセレナーデ
□風に舞う花びら
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満月の夜、黒い招待状によって招かれた場所は『魔界』。
そこで出会った魔王様は、白髪に銀灰色の瞳をしていて、笑った顔はそこらの少年と大差ない。
かくして私の魔界ライフは始まった――
――が。
「だからっ、私は結婚なんてしません!!」
リトの大声は部屋中に響き、流石の彼も目を丸くしている。
「リト様、ご決心なさって下さい。何のために魔界にいらっしゃったのですか。」
彼ことケイはリトを宥めるが、反って怒らせている。
「こっちだって来たくて来た訳じゃありません!なら帰して下さいよ!」
「それは無理なお願いですね。」
ケイは笑顔でいけしゃあしゃあと言ってのける。
「とにかくっ、セイの花嫁なんて御免ですから!」
リトは一言言い残すと、バタンッと盛大な音を立てて出て行った。
残されたケイはやれやれと溜息をひとつ。
「全く……。リト様も強情ですね。」
ケイは自ら紅茶を淹れ、ソファに腰掛け一休みする。その動作は実に優雅で、先程のリトの事など全く意に介さないかのようだ。
「あの晩餐で、陛下はリト様を痛く気に入られた。こうなった以上、リト様は逃げられませんよ。」
ケイは紅茶をあっという間に飲み干し、まるで何事も無かったかのように部屋を出た。