闇夜のセレナーデ
□白の魔王様
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「……ま。」
あれ、なんだか声が聞こえる。
「リ……様。」
うっすら目を開けると、まだ外は暗い。
……なんだ、まだ眠れるじゃない。
そう思い再び目をつむろうとしたが、
「おはようございますっ、リト様!!」
「わぁっ!」
耳元で大声を出されたら、飛び起きるしかない。ケイさんは何だか眉間に皺を寄せている。
「昨日、私が来るまでに支度を済ませて下さいと申しませんでしたか?」
「え?だってまだ夜じゃないですか。」
「魔界に人間界でいう太陽のようなものは存在致しません。つまり、朝も昼も変わらず暗いままです。」
「……初耳です。」
「まぁ、言わなかった私にも非は有りますしね。取りあえず朝食をお持ち致しますので、それまでに着替えて下さい。」
そう言ってケイさんは颯爽と部屋を出て行った。
「着替えって……。クローゼットの中にあるの着ても良いのかな?」
確かに今の私の格好はスラックスにTシャツという部屋着状態だから、このお城の中は歩き回れない。
かと言って……。
「うわぁ……。」
昨日部屋を探索した時にも見たけれど、クローゼットに入っている服は全て何処かのお姫様が着るようなドレスばかり。
一体どれを着ろと……。
仕方なく一番シンプルなワンピースを選んで着るが、完璧に衣装負けしてるのが悲しい。
こんなフリフリワンピースを私が着こなせる訳ないじゃないか。
――コンコン
「リト様、入りますよ。」