王国物語
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「シェスカ姫様、王子様からまたお手紙が届いていますよ」
「本当!?」
あのヘタレ王子がこの屋敷に迷いこんできてから一ヵ月余りが経ちました。特に困ったこともなく、私と姫様は平穏に暮らしております。
変わったことと言えば、ただ一つ。
王子様から、定期的にお手紙が来るようになったことです。
「えーと……『今日は庭の菊が綺麗に咲いていたよ。今度シェスカちゃんと一緒に見たいな』」
……内容が若干ヘタレているのには、触れない方が良いのでしょうか。
「そっか、綺麗に咲いてるんだ……王子様もお花好きなのかなあ。押し花とか添えても良いかな?」
姫様がとても嬉しそうなので、目を瞑っておきますか。
「姫様、押し花を作るなら庭で花を探しますか?」
「うん!」
友達のいない姫様。
ご主人様と奥様を亡くされてから、もう3年経つのですね。
どうか、王子様との交流が姫様の幸せに繋がれば良いと、願うばかりです。
「ねえリーザ、このお花なんてどうかな?」
「少し虫に食われていますね、こちらなんていかがですか?」
「綺麗な白だね!」
姫様の瞳はキラキラと輝いています。とても可愛らしいです。
押し花にする花を見繕った私達は、すぐに厚い本に挟めました。これで数日後には手紙に添えることが出来るでしょう。
一連の作業を終える頃には、丁度ティータイムに良い時間帯になっていました。自室でお休みになっている姫様の元にティーセットを持って行きます。
「失礼します、お茶の時間ですよ」
「もうそんな時間なんだ。ねっ、今日のケーキはなあに?」
「アップルパイですよ。ダージリンでよろしいですか?」
「うん!」
いつも通り紅茶を入れると、部屋いっぱいに良い香りが広がります。
嵐の前の静けさってヤツです。