王国物語

□春がやって来た
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明くる日、馬鹿王子と腹黒執事はお城に帰ることになりました。

荷造りは私とアークで完璧にやりました。まあ、また動物に昼食を全て与え、アークとはぐれるようなことがなければ無事に帰れるでしょう。

辺境のこの辺りでは、物騒な噂は聞いたことがありません。だからこそ、私とシェスカ姫様2人でも平穏に生活出来ているのですけれどね。



「シェスカちゃん、本当にありがとうね。」


「いえ、私は何も……。むしろお礼ならリーザの方に。」


「姫様……!」



そんなよろしいのです。例え王子の通った廊下の装飾品がことごとく床に落ちていようとも。例え馬鹿王子の使った部屋が一夜にして無残にも散らかり放題になろうとも!
全て姫様が喜んで下さるから、そんな……!



「良いのですよ、王子様。彼女達は国民です。王子様に尽くして当たり前なのですから。」



「アーク……!」



どうしてこの馬鹿王子はアークの黒さに気付かないのでしょう。まあ、「そんなことないよ」と否定する度量は評価してあげますが。




「あの、よろしかったらまたお立ち寄り下さいね?」


「……是非!」



姫様と王子はお互いに顔を赤らめていらっしゃいます。まあ、なんと初々しい。
姫様にも春が来たのでしょうか。

お2人は別れを惜しんで幾つも言葉を交わしてらっしゃいます。



「まずまずの働きぶりだったぞ。」


「貴方はまず主人の躾から始めたらいかがですか?」



上から目線だなんて偉そうに。王子に言われるならまだしも、一介の執事に言われる筋合いはありません。



「あの王子の様子では、またここに来ることになるな。」


「王子様は、歓迎致しますよ!」








どうやら私には
冬が来たようです。




 

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