王国物語

□世界は姫を中心に回っている
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その日の晩餐はシェスカ姫様と王子様の意向で、私とアークもご相伴させて頂くことになりました。



「アーク、このローストビーフ美味しいね!」


「ええ、リーザ様がお作りになったそうですよ。」


「そっか、すごく美味しいよ!」


「あ、ありがとうございます……」



ニコニコと本当に美味しそうに召し上がっている王子は良いとして、アークはさっきと言ってる事180度方向転換していますよ。
私は反射的に引きつりながら返答する以外にどの様な反応を返せば良いのでしょうか。



「王子様、リーザの作ったリゾットも美味しいんです。あの、良かったらどうぞ。」



ああ姫様、そんな恥ずかしがっているから、馬鹿王子の頬も赤くなっていますよ!

けれど2人のほのぼのした雰囲気は本当にお似合いで……。思わず私も微笑んでしまいます。



「…………。」


何でしょう、この横から冷ややかな視線。

見ては駄目、きっと見たら負けなのです。


けれど思わず横目で見てしまい……



「(め い ど ば か)」



――!!

口パクでしたがしっかり分かりましたよ!何なんですかこの二重人格っ!



「(まっ く ろ く ろ す け!)」



お返しに口パクで返せば、アークは一気に眉を顰めました。先に仕掛けてきたのはアークです。


姫様と馬鹿王子はもはや2人の世界を作り出し、私とアークはお互い悪口を言い合い、晩餐は気付いたら終わっていました。







「で、何で俺まで手伝わされてるの。」


「働かざる者食うべからず、ですよ。」



何の嫌がらせか、アークは食器を洗いながら私の方に水をかけてくるのですが。
ちょっ、リボンが濡れたじゃないですか!



「まあ、王子様も喜んでいた。一応礼を言う。」

「王子のためではありませんよ。姫様のためです。」



あとは、この食器を拭いて食器棚に戻せば今日の仕事は終わりです。アークもどんな腹が黒かろうと立派な執事のようで手際が良く、言いたくありませんがかなり助かります。



「本当、リーザはシェスカ姫様中心に回ってるんだね。」



わざわざ私の横でアークは皮肉たっぷりに言うものですから、一度目を伏せて、不敵に笑ってやりました。






「姫様至上主義の何が悪い」




 

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