王国物語

□嫌み合戦
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あの馬鹿王子に用意した部屋のベッドメイキング。緑の不審物になった原因でもある仕立ての良いマントの洗濯も終わって。


後はシェスカ姫様と馬鹿王子の御夕食作りですね。せっかく姫様が王子の(思わぬ)来訪で喜んでいるのです。

姫様の好きなメニューで少し豪華にしましょう。


……なのに、なんでアンタがいるの!



「王子様はミディアムよりミディアム・レアの方がお好きだ。」


「姫様はミディアムの方がお好きです。」



厨房に立って腕を振るっていれば、アークが横から茶茶を入れて来るのです。
さっきからあーでもないこーでもないと、あなたは私の小姑ですか!?



「味付けはまあまあだな。」


「ここはシェスカ姫様のお屋敷です。王子に全て合わせる訳がないでしょう。」


「何を言う。国は王子様を中心に回っているんだ。」


「少なくともこの屋敷内は姫様を中心に回っています。」


バチバチと私とアークは睨み合い、火花を散らします。絶対この人と仲良く出来る気がしません。



「このようなところで油を売らず、馬鹿おコホンコホン、王子様の側へ行けばよろしいではありませんか。」


「今『馬鹿王子』って言おうとしませんでした?」



私としたことが。
突如口調を敬語にして黒い笑顔を浮かべるのやめて頂けませんか。



「黒さが滲み出てますよ。」


「ほんと君っていい度胸してるよね。」


「ありがとうございます。」



彼と嫌みを言い合っていたらキリがありませんね。すると、アークは黒くない表情で笑みを浮かべました。

すごく気持ち悪いのですが……



「君、今失礼なこと考えたでしょ。」


「さて、何のことですか?」



図星でしたが、そんなことで動揺する私ではありません。



「あのさ、俺の名前はアークね」


「王子が呼んでいたので存じています。」


「ほんと可愛くないね。」


「別に可愛らしさを求めちゃいませんから。」


「はあ。で、君は?」


「……。リーザ、ですが。」


「ふーん。」


「人に名前を聞いといてその反応は何なんですか!」







くだらないやりとりのせいで
晩餐の時間が遅くなってしまいました

全部あのアークという
腹黒執事のせいです!



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