王国物語
□不審物と盲目王子主義
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心優しいシェスカ姫様は、万人に優しいのです。それが例えば、緑の不審物に成り下がった王子でも。
その盲目王子主義の執事野郎でも!
「あー、生き返った!ごちそうさまでした。」
怪しいことこの上ありませんが、王家の紋章も持っていたことです。一応は本物の王子で間違いなさそうですね。
「ありがとうねシェスカちゃん。」
「どういたしまして。お腹が空いていただけで本当に良かったです。」
姫様には私以外年の近い方が側にいらっしゃいませんでした。久し振りの他人との会話、嬉しいのでしょうね。ほら、可愛らしい笑みが溢れんばかりに零れています。
やはり姫様は世界一素敵です……!
「王子様は、どうして屋敷の庭で倒れていたのですか?」
「あはは。僕の昼食、森の動物にみんなあげちゃって。そこにいる執事のアークともはぐれちゃってさ。」
この屋敷に着いたら倒れちゃったんだ。ってふざけてんですか。
馬鹿王子の側にいるあのアークとかいう執事も、何やってるんですか。
今日中に薔薇園の手入れを終わらせたかったと言うのに、どう責任とって下さるんでしょうか?
ふつふつと阿呆2人に怒りが湧く中、姫様は更に優しさを発揮しておりました。
「よろしかったら、今日は屋敷にお泊まりになって下さい。あの、明日お城に帰れるように準備しますから。」
姫様、こんなところで輝かしい笑顔は必要ないのです。と言えたら、どんなに良いことでしょう。
馬鹿王子はさも嬉しそうに頷いています。ああ、仕事が増える。
しかし、私とて馬鹿ではありません。
「アーク様、王子様の持ち物について相談したいことがございます。ご助力願えませんか?」
私はあえて、あえて淡々と言いました。けれどこの執事、うさん臭い笑みを一向に崩しません。
「ええ、構いませんよ。」
……この執事、絶対裏がありますね。私は確信しました。
「では、着いて来て下さい。」
「王子様、しばし失礼致します。」
姫様と王子がいる部屋から声が届かないと判断した瞬間、廊下のど真ん中にも関わらず歩みを止めました。
「どうなさいました?」
アークは当然尋ねてきます。
「ここからは、王子様にもシェスカ姫様にも声は届きませんよ。……いい加減、化けの皮を剥したらいかがですか?」
私は思っていたことを素直に言いました。回りくどいのは嫌いです。
するとアークは目を見開いて驚いたようでした。
「どうして気付いた?」
どうやら本性を現す気なのか、先程より明らかに声色が低いです。
「その引きつった笑顔でよくおっしゃいますね。」
「初対面でバレたのは君が初めてだよ。」
ひどく面白そうに笑うものですから、思いっきりしかめっ面をお見舞いしました。
するとアークはますます口角を釣り上げるのでした。
……ブラックリスト決定です
王国物語
「で、何を手伝えば良いんだい?」
「とりあえず滲み出る
黒さを何とかして下さい。」
「ははっ、無理なお願いだね。」