王国物語
□可憐な姫と棘
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麗らかな午後。
暖かな陽射しと柔らかな風に包まれて。
私、リーザは庭の薔薇達の世話をしていました。
私がこの世で最も敬愛する姫様がとても大切にしている薔薇の刺を、丁寧に丁寧にとっていたのです。
一括りにされた黒髪は風に靡く事などなく、姫様から与えられた衣服だけが舞っていた……そんな時。
「リーザーっ!」
可憐な声が、決して広くはない薔薇園に響き渡りました。
私は直ぐさま手を止め、声のした方へ駆け出します。
「シェスカ姫様!」
何故なら、声の主は私の敬愛する主人、シェスカ姫様だったからです。
「どうなさったのですか?」
「あのね、森に面してる方の庭になんか落ちてたの。」
「拾ってはなりませんよ。」
すかさずそう言えば、まだ拾ってないよ。と返事が返って来ました。一安心です。
心優しい姫様は、よく捨て猫や傷付いた鳥を保護して来るのです。そして、引っ掻かれたりつつかれたりしては怪我をしてしまわれます。その度に私は冷や冷やするのです。
今回も動物の類でしょうか。
私は薔薇の刺を取る作業を中断して、姫様の言う庭に来てみました。
……ありました。
何だか草に紛れてしまいそうな緑の物体が。
これは動物などではありませんね。
「リーザ、あれ何かな?」
「さあ、私にも分かりません。」
怪しげな緑を警戒して、長めの木の棒を拾いました。
――つんつん
つついてみると、予想以上に柔らかな物体です。よくよく見ると、緑は布のようです。
「――――っ!」
「シェスカ姫様、何かおっしゃいましたか?」
「へ?何も言ってないよ。」
「変ですね、確かに何か聞こえ……」
「――まっ!」
「「…………。」」
ええ姫様。確かに聞こえました。思わず私達は主従の壁も気にせず抱き合ってしまいましたが、そんなもんグダグダ抜かしてる事態ではございません。
姫様、私は命に変えてもお守りいたしま……
「王子様あぁああっ!!」
……はい?
森の方からやってきたこの男。不躾にも屋敷に不法侵入してきた上に礼儀もなく大声をあげるなど!
懲らしめてやろうとした矢先、この男はあの緑の物体に抱き付いていた。
「王子様!大丈夫ですか!ですから動物にご自分の昼食をあげてはいけませんと申したのにっ!」
「うっ、うぅ……お腹空いた……」
何なんですか、この2人。怒る気も失せました。
……って姫様、あんな2人に近付いてはいけませんっ!馬鹿が移りますよ!
王国物語
王子様とお姫様の出会いの物語
いえいえ、毒舌メイドと腹黒執事の
バトルの幕開けです