Imitation
□それは、私が純粋だった頃
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「……なるほど。黒の太陽から魔王の軍隊ですか。」
帰還したティア達から報告を受けたカインは、溜息を漏らす。
すぐに気を取り直して、向き直る。
「みなさんご苦労様でした。今日明日は非番にしますから、ゆっくり休んで下さい。」
その一言で、リルとフォルテはそそくさと司令室を出て行く。フィンは動こうとしないティアを一瞥するけれど、すぐに自分も部屋へ戻って行った。
「ティアも疲れただろう?今回はいつもの任務と大分違っていたからね。自室に戻ったら?」
カインはティアの前だけで敬語が取れる。自分が彼にとって特別なんだと、ティアはいつもこの瞬間嬉しくなる。
でも今は、そんなことで騙されたりはしない。
「カイン、何か隠してるでしょ。」
「え?」
「カインが溜息つくときって、大抵隠し事とか悩み事があるんだよね。」
それに少し挙動不審だよ。と、暗に「素直に言いなさい」と言われたカインはバツの悪い顔をする。
「全く、ティアには敵わないよ。」
「何年一緒にいると思ってるの?」
ティアはくすくす笑う。
カインは笑顔のティアに胸に暖かなものを感じるが、今は指揮官の顔をする。
「先程アゲハが帰って来ました。」
「アゲハって確か……。」
アゲハとは、騎士団にも魔導団にも所属しない、カイン直属の諜報部隊の人間である。
戦闘能力こそ高くないが、彼女の操る忍術と、身のこなしの軽さは右に出る者はいない。
ティアも何度か会ったことがあり、一目置いている。
「彼女には世界情勢の調査任務に就いてもらっていました。」
「それで、報告はなんて。」
「……どうやら、同じ事態が他の国でも起きているようです。」
「えっ!?」
魔王の軍隊が、村や町を襲っている……?
じゃあ、軍備の無い国はどうなるの。